<1543> 草花の在来と外来について (2)
在来も 外来もなく 受け入れて 植生豊かな 岸辺の姿
外来の草花と言えば、春になるとイの一番に瑠璃色の花を咲かせてそこここに見られるオオイヌノフグリをあげることが出来る。これはユーラシアからアフリカ大陸が原産の二年草で、今や在来のイヌノフグリを圧倒しその存在感を示している。今一つはヒメオドリコソウで、これはヨーロッパ原産の二年草である。ともに極めて旺盛な繁殖力でその生育域を広げている。
ほかにも外来の草花には前回写真で紹介したセイヨウカラシナがあり、春に花を咲かせる草花では、ナヨクサフジ、ハルジオン、シロツメクサ、セイヨウタンポポ、オニノゲシ、オランダミミナグサ、オランダガラシ、ナガミヒナゲシ等々、あげれば切りがないほどで、みな日本の風土、環境に適合し、繁茂している草花たちである。まだ、ほかにも見られるが、ここでは省略する。
ところで、これら外来の草花たちは、中に荒地などで、自分たちだけ勢いよく繁茂する光景を目にすることもあるが、これは稀で、ほかの草花たちと共生し納まっている様子が見て取れる。セイヨウカラシナのように一時は猛烈な勢いである一定の場所を占拠して生える光景も見られるが、何年かするとその勢いは納まり、ほかの草花と折り合いをつけ、落ち着くということが見て取れる。
ほかにもシロツメクサやセイタカアワダチソウ、ヒメジョオン、オオマツヨイグサなどがその例としてあげられる。休耕田を占拠していたセイタカアワダチソウは大和においても一時期よく見られたが、最近、そういう風景が少なくなっている。この状況はヒメジョオンやオオマツヨイグサの以前にも見られた現象であり、シロツメクサにも言える。今は日本の風土の中で収まりを見せ、ほかの草花たちと共生し、その環境に組み込まれているのが植生の風景として見られる。
最近、在来と外来のせめぎ合いが指摘されるタンポポの調査結果がニュースになり、在来のタンポポが復活して来たと言われるが、このタンポポの状況にも日本の外来植物を受け入れる風土的な自然環境の多様性が認められるところで、それが有効に働いていることが思われる。
この調査では雑種の観点が抜けているので少々疑問に思われるところなきにしもあらずだが、仮に雑種が表面化しても多様性を左右するには至らないから、この点の考察に何ら支障を来たすものではない。とにかく、この外来種の定着の姿は、他種を排除せず、在来と外来が共生するという具合に落ち着くということを物語っていると言える。
思えば、これは日本の文化の成り立ちに似るところがある。導入した新しい文化を丸ごとそのまま受け入れるのではなく、よく咀嚼して旧来の文化と折衷し、慨するところ、どちらかを退けるのではなく、新しい文化を構築することをやって来たと言ってよい。導入した漢字から平仮名や片仮名を生み出して、日本独自の多様な表現方法を生み出したように。これは日本という国が極東に位置する小さな島国であることと大いに関わりのあることだと言えるように思われる。
つまり、本来の風土的基盤の上に外からの事物や精神を受け入れ、その内と外との融合折衷により、ベストな営みに繋げる意思が昔から風土の中に綿々と受け継がれて来たことを物語るものと言ってよい。この風土を基盤にした多様性に富む日本の文化を最もよく示しているのが宗教における多神教の精神で、その精神を培っている風土、つまり、日本的な環境がこの多様な草木にも特徴的に見られるということである。
一時は猛烈に繁茂する風景が見られるなどするが、ビートルズ旋風が吹き荒れた状況に等しく、時が過ぎるとその熱狂は納まり、普通に受け入れられるという具合で、外来の草花にもそれが当てはまると言えるわけである。棚田の畦や川岸が最も象徴的場所だと言えるが、猛烈に繁茂したものは何時か落ち着くことになる。これは、猛烈に繁茂しようが、多少の異変を来たそうが、それらを受け入れ、育み、在来との調整をし、豊かな植生を展開する日本の風土、即ち、自然環境の素晴らしさに起因するということである。
そして、これは人間社会の文化的状況にも見られるということであるが、もしかしたら、こうした日本の風土、即ち、自然環境が人間社会の文化的状況に反映しているのかも知れない。きっとそうに違いない。誇り高い人間は、そのプライドにおいてこれにはなかなか納得せず、認めないのであるが、私には風土、即ち、自然環境の大切であることが思われて来る。
という次第で、日本においては、日本の風土、即ち、自然環境の中においてともに生きるという共生の美徳が展開されているのである。春は外来種がよく花を見せる。その花々を見ながら思うことではある。 写真左は隣り合わせに花を咲かせる外来のセイヨウタンポポ(下)と在来のカンサイタンポポ(上)。 写真右は花粉団子をつけてセイヨウタンポポの花にやって来たミツバチ (いずれも大和川の河川敷で)。