大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2019年11月09日 | 植物

<2862>  大和の花 (930) サルトリイバラ (猿捕茨)                                         ユリ科 シオデ属

         

 山野に生える落葉つる性の低木で、枝に鉤状の刺があり、刺と葉柄の巻きひげによって他物に絡み、茎を伸ばす。葉は長さが3センチから12センチの円形から楕円形で、先は短く尖り、縁に鋸歯はなく、革質で、表面にやや光沢があり、3個から5個の平行脈が目立つ。葉柄を有し、葉柄の下部には托葉から変化した1対の長い巻きひげがあり、前述の通り他物に絡む。葉は互生。

 雌雄異株で、花期は4月から5月ごろ。葉の展開と同時に、葉腋から散形花序を出し、黄緑色の小さな花を多数つける。花被片は6個。長さが4ミリほどの長楕円形で、先端部は反り返る。雄株の雄花は雄しべ6個、雌株の雌花は花柱が基部から3裂し、雌雄の違いがわかる。液果の実は直径7ミリから9ミリほどで、10月から11月ごろ赤く熟し、食べられる。

 北海道、本州、四国、九州、沖縄に分布し、国外では朝鮮半島、中国、台湾、東南アジア一帯に見られるという。大和(奈良県)では山野の林縁などで普通に見られる。サルトリイバラ(猿捕茨)の名は、敏捷なサルが強烈な刺に引っ掛かって逃げられず、捕らえられる意によるという。

   漢名は菝葜(ばっかつ)で、漢方の生薬名でもあり、根茎に多量のサポニンを含み、薬用にされ、これを小さく刻んで日干しにし、煎じて服用すれば、おできなどの腫れものや利尿に効能があるという。また、サンキライ(山帰来)とも称せられ、赤い実の枝は野趣に富み、活け花の花材にされる。他にも多くの地方名を有することで知られる。なお、西日本では若葉を端午の節句の柏餅のカシワの葉に代用する。

  また、若葉は茹でて食用にし、成葉はお茶にする。刺があるので厄介な植物であるが、昔から大いに利用されて来た。 写真はサルトリイバラ。左から多数の雄花をつけた枝木、雄花のアップ、熟した赤い実、托葉の変化した巻ひげ。   成果なりさるとりいばらの朱赤の実

<2863>  大和の花 (931) サネカズラ (真葛・実葛)                                               マツブサ科 サネカズラ属

            

 山野の林縁に生える常緑つる性の木本で、他物に枝を絡めて伸び上がる。茎は直径2センチほどになり、褐色で柔軟なコルク質の外皮を有し、枝の外皮には粘液が含まれている。葉は長さが5センチから13センチほどの楕円形で、縁にはまばらな鋸歯が見られ、先は鈍く尖り、基部はくさび形。革質で、表面には光沢があり、葉柄があって互生する。

 雌雄異株または同株で、花期は8月ごろ。葉腋に直径1.5センチほどの黄白色の花をつける。肉厚の花被片は花弁状で、雄花では球状の赤い葯隔の雄しべが見られ、雌花では緑色の雌しべに白い花柱が目につく。実は集合果で、直径3センチほどの球形となり、11月ごろ真っ赤に熟す。

 どちらかと言えば、暖地性で、本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄に分布し、韓国の済州島、中国、台湾に見られるという。大和(奈良県)では標高の高いところを除いて全域的に見られ、ときに民家の庭先などでも見かける。これは真っ赤な実が美しく、植えられたものと思われる。

 サネカズラ(真葛・実葛)の名は赤い実が美しいつる植物を意味している。樹皮に含まれる粘液は男の整髪に用いたことからビナンカズラ(美男葛)、また、粘液は手漉き和紙の糊料にしたことからトロロカズラ(とろろ葛)とも呼ばれる。一方、赤く熟した実を日干しにしたものを南五味子(なんごみし)といい、咳止め、滋養強壮などの薬用にされて来た。

  つるがよく伸びて絡まる姿から、「逢う」「来る」の枕詞に用いられ、『万葉集』には「さねかづら」「さなかづら」で登場を見る万葉植物である。『小倉百人一首』には「名にし負はば逢坂山のさねかづら人に知られで来るよしもがな」(25番・三条右大臣藤原定方)と見える。 写真はサネカズラ。左から落花した雄花、白い花柱が見える盛りの雌花、真っ赤な集合果の実、雪にも色あせない赤い実。    実葛見つけぬ散策コース変へ

 

 


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