大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年11月12日 | 創作

<3225>  写俳百句  (11)  コウヤボウキとナワシログミの花

                 何の花冬の日差しに冬の花

                      

 矢田丘陵の山足で、コウヤボウキの花を撮っていたら、三人の老女が通りがかり、その一人傍に来て、何の花かと訊いた。二人は関心がなかったとみえ、ちょっと立ち止まっただけで、歩き去った。興味を持ったらしい老女は花を見ながら説明を求めて来た。という次第で、和名の由来とかを話した。

 コウヤボウキは高野箒で、その名は高野山の僧侶が小低木であるこのコウヤボウキの細くしなやかな枝を束ねて箒にしたことに因むということ。また、『万葉集』にタマバハキ(玉箒)の古名で見え、大伴家持の歌でよく知られ、正倉院御物にも実物が保存されていることなど。

 話のついでに花のついた一枝を折り取って、「多分、そんなにもたないでしょうが」と言葉を添えて手渡すと、老女は礼を述べて友達を追って行った。私は日差しが雲に遮られるタイミングを待って、暫くコウヤボウキの花に対峙した。

 一方、ナワシログミは、山野の至るところに生え、グミの仲間では群を抜いて多く、よく見かけるが、他の草木に紛れ、雑木然として見え、花や実がついても見過ごされることが多く、あまり関心を持たれないところがある。私がよく足を運ぶ馬見丘陵公園の自然林にも見られるが、その花に立ち止まる来園者はほとんどいない。

 この間は、その花にカメラを向けていたら、夫婦らしい中年の男女が近づき、「かわいらしい花ね。何の花ですか」と女性の方が訊いて来た。ナワシログミであることと、グミの仲間で、苗代をつくる初夏のころ実が熟れるのでこの名があるとをつけ加えた。実は食べられるけれど、よほど熟さないと渋いということ。また、実は野鳥の好物で、ヒヨドリなどが競って食べることなどを話した。

 二人は「かわいらしい」を連発しながら、スマホを取り出し、写真に収めて立ち去って行った。なお、コウヤボウキもナワシログミも、大和地方では晩秋から初冬のころが花の盛りで、季語からすれば秋ということになるが、立冬を過ぎて詠んだ実感により冬と見たことによりこの句を得た。 写真はコウヤボウキ(左)とナワシログミの花(右)。

 


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