<2418> 大和の花 (582) イワタバコ (岩煙草) イワタバコ科 イワタバコ属
谷筋などのやや日陰になった湿気のある岩壁などに着生する多年草で、岩に貼りつくように群生することが多い。葉は長さが10センチから30センチほどの楕円状倒卵形で、質は軟らかく、表面に皺があり、先は鈍く尖って、不揃いの鋸歯が見られる。また、葉には長さが3センチから10センチの翼状の柄があり、2、3個が根生する。
花期は7月から8月ごろで、根元より長さが5センチから12センチの花茎を1、2個立ててその先に散形花序を出し、5深裂した紅紫色の小さな花を次々に咲かせる。花冠は筒状鐘形で、平開し、裂片の先は尖る。筒部内面には黄橙色の斑紋があり、5個の雄しべが花柱を囲む。雌しべの花柱は糸状で、柱頭が丸く膨らむ。実は広披針形の蒴果で、長さが1センチほど。その名は岩場に生え、葉がタバコの葉に似ることによる。
本州の福島県以西、四国、九州に分布し、国外では台湾に見られるという。大和(奈良県)には多く、紀伊山地の谷筋でよく見られる。若葉は山菜として食用にされ、イワナ(岩菜)、イワヂシャ(岩萵苣)、タキヂシャ(滝萵苣)などの別名でも知られ、『万葉集』の歌に登場するヤマヂシャ(山萵苣)、ヤマヂサ(山治左)をイワタバコとする説が強く、万葉植物としてあげられている。
なお、イワタバコは薬用植物としても知られ、干した葉を苦苣苔(くきょたい)と称し、煎じて服用し、健胃薬として用いられて来た。また、花がかわいらしいので、観賞用の山草として栽培もなされる。 写真はイワタバコ。左から水が滴る岩場で水に濡れながら咲く花、次々に咲く花、花のアップ(五條市大塔町ほか)。 科学を悪用することは神を冒涜することに等しい
<2419> 大和の花 (583) シシンラン (石弔蘭) イワタバコ科 シシンラン属
ツクバネガシ(衝羽根樫)などカシ類の古木、コケなどが生える樹幹に着生する常緑小低木で、高さは20センチから30センチほどになり、基部が木質化する茎(枝)は樹上を這うように伸びて分枝する。葉は披針形で、縁には大きい鋸歯が見られ、短い柄を有し、輪生状につく。
花期は7月から8月ごろで、葉腋に長さが3センチから5センチの筒状で先が5浅裂する淡紅色もしくは白色の花を1、2個つける。暖地性の植物で、本州の太平洋側では伊豆半島以西、日本海側では京都府以西、四国、九州、南西諸島に分布し、国外では台湾や中国南部に見られるという。
大和(奈良県)では中、南部数か所での確認が報告されているが、中でも上北山村小橡の水分神社境内のツクバネガシに着生している個体群は、昭和7年(1932年)、日本の北限に当たるとして国の天然記念物に指定され、その後、絶滅寸前種にあげられ、今に至っている。
シシンランは全国的にも珍しく、環境省でも絶滅の危機が増大しているとして絶滅危惧Ⅱ類にあげている。なお、シシンランは国指定の天然記念物で奈良県の絶滅寸前種にあげられている小型の蝶 ゴイシツバメシジミの幼虫の食草としても知られ、シシンランの保護、増殖がこの点においても望まれている。
写真は左からシシンランが着生するツクバネガシの古木。マメヅタ(豆蔦)などと共生し、花を咲かせるシシンラン。木洩れ日が当たって白く浮き立つシシンランの花(いずれも上北山村小橡の水分神社)。 神を冒涜する者は 神の制裁を受けることになる
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます