<2796> 大和の花 (885) ヤブラン (薮蘭) ユリ科 ヤブラン属
山野の林縁や道端などの草叢に生える常緑多年草で、庭や公園などに植えられることも多く、よく見かける。根生する葉は長さが30センチから60センチの線形で、先がやや尖り、叢生する。ヤブラン(薮蘭)の名は薮のようなところに生え、葉がラン科植物の葉に似ていることによる。
花期は8月から10月ごろで、葉間に長さが30センチから50センチの花茎を立て、先に総状花序を穂状につけ、淡紫色の小さな花を多数咲かせる。花は花被片6個、雄しべも6個あり、名に「ラン」とあるが、ユリ科の仲間であるのがわかる。実は球形の蒴果で、熟すと光沢のある黒色になる。
本州、四国、九州、沖縄に分布し、国外では朝鮮半島、中国、台湾に見られるという。大和(奈良県)では山足などで見かける。民家近くでは植えられたものが逸出した個体も見かける。写真はヤブラン。花期の姿(左)と果期の姿(右)。
秋の夜や汝(な)が顳顬の汝(な)が愁ひ
<2797> 大和の花 (886) ヒメヤブラン (姫薮蘭) ユリ科 ヤブラン属
山野の日当たりのよい草地などに生える多年草で、匐枝を出して殖え、時に群生するのを見かける。葉は長さが10センチから20センチほどの線形で、根生する。花期は7月から8月ごろで、葉より短い花茎を立て、その先に淡紫色のミリ単位の小さな花をまばらにつける。花被片6個は平開し、花の色は微妙に変化して青色が勝ったものや紅色が勝ったものなど。ときに白色のものも見られるという。
ヤブランよりかなり小さく、これを姫と見たことによりこの名がある。まことに可愛らしい花であるが、写真には撮り辛いところがある。日本における分布はヤブランよりも広範囲で、日本全土に及び、国外では中国と台湾に見られるという。 写真はヒメヤブラン(小さい花だが6花被片を有する。奈良市の大和高原ほか)。 秋天や西里抜けて法隆寺
<2798> 大和の花 (887) ジャノヒゲ (蛇鬚) ユリ科 ジャノヒゲ属
山野の林内や草叢に生える常緑多年草で、根茎から匐枝を出して殖え、群生することが多い。葉は長さが10センチから20センチの線形で、根生する。花期は7月から8月ごろで、葉間から花茎を立て、7センチから15センチほどの高さになり、その先に小さい白色から淡紫色の6花被片の花を総状につける。
実(種子)は直径7ミリほどの球形で、光沢のある濃くて鮮やかな青色で、花よりも実が印象的なところがある。この実はよく弾むので、ハズミダマ(弾玉)の異名もあるように、子供が投げつけて遊ぶ。また、根を干したものを麦門冬(ばくもんどう)と呼ばれ、滋養、強壮、咳止めなどの薬用にされる。ほかには庭などに植えられ、園芸にも用いられ、見た目よりも利用価値のある草本である。
北海道、本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島、中国、ヒマラヤまで広く見られるが、日本が分布の東限に当たるという。大和(奈良県)では田畑の畦などで普通に見られる。ジャノヒゲ(蛇鬚)の名は、細長い葉の形状によるもので、リュウノヒゲ(龍鬚)の別名でも知られる。
同属のオオバジャノヒゲ(大葉蛇鬚)はジャノヒゲより葉の幅が広く、4ミリから6ミリあり、実(種子)が黒く熟すので、この点を見れば判別出来る。オオバジャノヒゲは本州、四国、九州、伊豆諸島の利島に分布を限る日本の固有種である。 写真は果期のジャノヒゲ(左)と花期のオオバジャノヒゲ(右)。 九月来ぬ尽きぬが生の課題なり
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