大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2014年05月29日 | 植物

<998> 金剛山のクリンソウ

        ほととぎす 金剛山に 初音聞く

 カメラを持って山歩きをしていると、出会う人に何を撮っているのかと訊かれることがある。望遠レンズと三脚を携帯しているときは「鳥ですか」と訊かれるが、答えは一つ。「花です」と返す。花に望遠レンズは不必要に思われるが、これが役に立つ。山での撮影は自然相手で、花を目撃しても障害があって近づけない場合が結構多く、このとき望遠レンズが役に立つ。

 また、山には木々の花も見られ、木々の花を撮る場合も望遠レンズが欠かせない。ために荷物が重くなるけれども、これを承知で持参する。全く使わず、骨折り損になる場合もあるが、持参してよかったと思うことの方が圧倒的に多い。これは、手を抜いてはいけないという気分にあることにもよるから納得である。撮る花を決めて出かける場合でも、山では思わぬ花に出会うことが多いので無駄になっても持参することになる。

 という次第で、昨日は金剛山に登った。別段目的があったわけではなかったが、登れば何かの花に出会えるだろうと思い三脚と四百ミリの望遠レンズも持参した。やはり、今日も男性登山者に訊かれた。「鳥ですか」と。「花です」と答えたら、いろいろと教えてくれた。で、クリンソウが見ごろだということで、クリンソウの生える場所は知っていたので、案内を乞うまでもなく出かけた。行ってみると、咲いていた。四、五年前に訪れたときよりも株数が増え、一面に紅紫色の花がみごとで、一部に白い花も見られた。既に二組ほど訪れ、花の撮影をしていた。「随分増えたですね」と話しかけると殖やしている人たちがいるという。なるほどとその一面の花群に納得がいったことではあった。

                    

 金剛山に草花の多いのは、一つに草花を大切にする登山者が多いこと。今一つには草を好んで食べるシカの少ないことがあげられる。また、金剛山にはいろんな目的で登る登山者が見られるが、金剛山の登山者ほど草花に詳しい登山者もいないように思われる。どこにどんな花がいつごろ咲くか、よく知っている。花を求めて登る私などは知らない方に属するかも知れない。

  東京で言えば、標高は半分ほどであるが、聞くところ、高尾山(五五九メートル・八王子市)に比することが出来ようか。大阪奈良府県境に位置し、大阪側にはロープウエイがあり、市民の憩いの場として、登山者には老若男女が見られる。私のように、花だけが目的の登山者はさほど多くないと思われるが、花に関心を抱いて登る登山者は多いように感じられる。

  クリンソウはサクラソウ科の多年草で、山地の湿り気のあるところに生える。根際に大きな倒卵状長楕円形の葉を放射状に広げ、その中心から八十センチほどの花茎を立て、五、六月ごろ、その先端部に紅紫色の花を段階輪状に咲かせるので、この名がある。奈良県では自生地が少なくなり、絶滅寸前種にあげられている。写真は群生するクリンソウ。アップは望遠レンズで撮影した。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿