<997> トチノキ (栃の木、橡の木)
黒蝶が 栃の花へと まっしぐら
果実を栃餅にするトチノキ科のトチノキは、クルミ科のサワグルミとともに巨木になる落葉高木で、大和では南部の紀伊山地に多く、渓谷沿いでよく見られる。高さが三十メートルほどになる個体もあり、下北山村前鬼のトチノキ巨樹群は名高く、奈良県の天然記念物に指定されている。ちょうど今が花の時期で、山歩きをすると谷筋で見かける。
花は掌状複葉の中から二十センチ前後の円錐花序を立て白い小花を多数つけ、樹冠一面に咲くのでよく目につく。雌雄同株で、花序の先端部分に雄花がつき、下部に両性花がつく。果実は球形の果で、熟すと落ちて裂け、それを収穫して、栃餅を作り、上北山村や下北山村では特産品として販売されている。秋には黄葉し、みごとである。
トチノキの花の時期には、ウツギやミズキ類など白色系の花が多く、蝶や蜂などの昆虫も活発な時期で、花の周辺はにぎやかである。写真には撮り得なかったが、尾根の方から一直線に飛んで来た黒蝶が私の眼前を過って谷筋の向かいに今を盛りに咲くトチノキ(写真=川上村神之谷)に向かって飛んで行った。では、トチノキの花に寄せる句をなお三句。
そそり立ち 天を指しゐる 栃の花
栃の花そそり立つなり 意志希望
栃の木の あたり明るき 花のとき
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