<1362> 露 草
露草の花は
天の色で
みんなの辛い思いを
受け止めている
だから ほら
涙の雫のように
あんなに
濡れているんだ
しかし
昔の人は 知っていた
その花の色が
やさしい時の移ろう間に
その雫を汲み取って
心を癒してくれることを
ツユクサ(露草)はツユクサ科ツユクサ属の一年草で、全国的に分布し、道端の草叢などで普通に見られる。茎は下部が地を這い、よく枝分かれするので、群生することが多い。茎の高さは大きいもので五十センチほどになり、鞘になった卵状被針形の葉が茎を抱く。夏から秋にかけて二つの苞に包まれた花を咲かせる。
花は花弁三個で、二個は大きく鮮やかな青色で、一個は小さく白ぽく見えるが、大きい花弁の青色がよく目につく。花を正面から見るとシンメトリック様であるのがわかる。この花は一日花で、朝開いて午後には萎んでしまう。蕾を包む苞に擬えてボウシグサ(帽子草)の別名でも呼ばれる。古名は花を搗いて染色に用いたことによる搗草、または着草の転によるつきくさ(月草、鴨頭草)で知られ、『万葉集』にはこの名で九首に登場を見る。
つきくさの露草で染めた青い色は褪せやすく、『万葉集』にはこの特徴をして詠んだ歌が見受けられる。次の歌はその一例である。所謂、当時のツユクサ(露草)は染料花であったことが以下の歌からもわかる。 写真は露を帯びた露草の花。
月草に衣は摺らむ朝露にぬれての後はうつろひぬとも 巻 七 (1351) 詠人未詳