<19> ヨ メ ナ
穏やかな 大和日和の 野菊かな
桜井市から奈良市にかけて大和高原を歩いた。 秋の花であるヨメナが咲き始めていた。 ヨメナはキク科ヨメナ属の多年草で、キク属のキクとは葉に違いがあり、細長いのが特徴の野菊である。
『万葉集』には「うはぎ」(菟芽子・宇波疑)の名で春の摘み草として登場し、 昔から馴染みがある。伊藤左千夫の『野菊の墓』の野菊は関東以北に分布するヨメナの仲間のカントウヨメナと言われ、ヨメナに似て可憐な淡青紫色の頭花を咲かせることで知られる。
また、ヨメナはユウガギク、オオユウガギク、ノコンギクともよく似て間違いやすいが、これらよりも花数が少なく、ユウガギクやオオユウガギクよりも舌状花に幅があり、 ノコンギクに比べると花に冠毛がほとんどなく、 葉に艶があって、ざらつかない特徴があることから、この点を見れば、判別が可能でる。
「大和路を思へば霧に濡れながら咲きし釣鐘人参の花」と、以前、 このような歌を作ったが、ヨメナは嫁菜で、 山足などに生えるシラヤマギクのムコナ(婿菜)に対する花として、高原ではツリガネニンジンなどともともによく姿が見られる。写真は左がヨメナ、右がシラヤマギクのムコナ。