「一燈照隅 万燈照国」(いっとうしょうぐう・ばんとうしょうこく)。という言葉があります。あるいは、「一燈照隅 萬燈遍照(いっとうしょうぐう・ばんとうへんじょう」とも言います。
これは最澄の説いた言葉です。
「一つの灯火だけでは隅しか照らせないが、その灯火が数多く集まると、国中を照らすことができる」という意味です。
安岡正篤先生は、この言葉について、
「一つの灯火を掲げて一隅を照らす。そうした誠心誠意の歩みを続けると、いつか必ず共鳴する人が現れてくる。一灯は二灯となり三灯となり、いつしか万灯となって、国をほのかに照らすようになる」と仰っています。
また、この言葉は、佐藤一斎の書いた『言志四録』の言葉を思い出させてくれます。
「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ。ただ一燈を頼め。」
一燈の灯りは自分の生き方であり、志です。自分は自分という一燈しか提げることはできないのです。他に頼っても、それはかりそめのものに過ぎない。
だから、どんなに先の見えない暗い世の中であっても、自分がどんな窮地に立たされたとしても、自分自身の志と信念を頼りとして、己を磨き、自分で力強く歩んでいくしかないのです。
また、そうすることで必ず道はひらけていくというのです。
憂えても、不平不満を言っても仕方ありません。私も、ただ、己の一燈を頼みとして歩いて行こうと思います。