今年の夏頃、近所のとある住宅が取り壊されて更地になっていました。「いずれ売りに出されるんだろうなぁ」と思っていたところ、先日子供と一緒にお使いへ行った帰り道、その更地に幟がたっていて、「好評!販売中」の文字が翻っていました。「あぁ、やっぱり売地になったんだな」と思ったのと同時に、「一区画だけなのに好評販売中って、どういうことだろう」と、何か引っかかるものが残りました。戸数100戸のマンションが発売してすぐ80戸売れたら、それは紛れもなく「好評販売中」でしょうが、一区画のみでしかも買い手を捜している最中のものに「好評販売中」って言うのだろうか、と違和感を覚えました。次から次に引き合いが来ているけれど、まだ成約に至ってないのでしょうか。それなら、何となく分かる気がしますが、生憎、その売地には幟のほか、スチールパイプの椅子にチラシが置いているだけで、上着を脱いでネクタイも外した営業マンが、白いワイシャツの腕をまくって所在なさげにたたずんでいます。どう見たって、千客万来といったようには見えません。実は、近くに事務所があって、そこには購入希望者が列をなしているのかもしれませんが、でもまぁ、「それもないよね」って感じです。買い物袋を両手に持って、前を行く子供の背中を追いかけながら、そんなどうでもよいことを考えていましたが、ふとある可能性が頭に浮かびました。「好評」というのは「販売」が「好評」なのではなく、売っている人たちにとって「好評」な物件を「販売」していますよ、と言っているのかも。つまり、腕まくりをした営業マンを含めて、この土地を扱っている不動産屋さんでは、みんなが口々に「この土地は場所もいいし、日当たりもいい。形だってきれいな長方形だし、どんな間取りの家にも向いているよね。最近扱った物件の中ではダントツNo1だね」なんて、日夜会社でも夜の居酒屋でも褒めまくって、「この土地を売ることが出来て、僕たちはなんて幸せなんだろう」、みたいな話をしているなら、それは売る側にとってみれば確かに好評と言えなくもないでしょう。そうすると、営業マンの所在なさげな様子も、「もし売れちゃったら、楽しみが奪われちゃうよぉ」という不安の現れだったのでしょう、きっと。
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