花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

精神のない専門人 (下)

2010-10-03 17:41:03 | Weblog
 マートンは、「どんな目標であれ」と言って、科学的成果、富の蓄積、女たらしを文化的目標の例にあげながら、それらを並列に置いていますが、私はある文化的目標を危険なものとして特に取り上げてみたいと思います。その文化的目標とは、名声や評価のように、他人に依存する性質のものです。科学的成果にしろ、富の蓄積にしろ、それは自分が生み出すものですが、名声や評価は他人任せです。以下は全くの創作です。ある上昇志向の強い検察官が上級ポストを目指していました。出世するとは、すなはち人事権を持った人に評価されること。評価されるとは覚え目出度いことです。となれば、出世出来るか出来ないかは、とどのつまり他人任せ、上司任せになります。ですから、出世したい人は、仕事の業績を残すと同時に、人事権を持った人に評価されなければなりません。そこで、この検察官は上司に気に入られようと一生懸命になりました。検察官になるくらいですから、能力は高いです。どうすれば気に入られるかを考えて、その通りに行動するのはお手の物です。では、正義を仕事の中心的な価値としなければならない検察官が、上司からの評価を中心的価値としたらどうなるでしょうか。それはきっと、中心的な価値を持たない人になってしまいます。他人の顔色を窺ってばかりいては、軸がぶれると言うか、あるいはそもそも軸がないと言うか、是非を問う絶対的な物差しを持っていないことになります。上司は一人ではありませんし、人事異動があるのでいろいろな人に仕えなければならないので、段々と場当たりが当たり前になってしまいます。能力が高いので、器用にその時その時の受けが取れる行為をやってのけますが、自分に一貫性が欠けていることを疑問に思ったりはしません。そういったことから、私は名声や評価そのものを過度に追い求めることは、危険な文化的目標だと考えます。名声や評価を追い求めるあまり、段々と軸のない、つまり価値を持たない人間になっていくからです。価値を持たない人間ならば、ポストに恋々とするあまり、やってはいけないことに手を染めることもあるでしょう。
 さて、今回の大阪地検のニュースは朝日新聞の特ダネだったようです。きっと、内部からのタレコミがあったのだと思います。つかまった検事も悪いですが、そういう検事を生むということは、職場の箍が緩んでいるんだろうなと思っていました。そしたら案の定、上司だった元特捜部長もつかまりました。みんながみんな、「上を向いて歩こう」人間、あるいはいつも上ばかり見ているヒラメだったのでしょうか?

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