花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

ポスト・コロナの社会

2021-01-23 10:16:59 | Book
 歴史人口学者のエマニュエル・トッドさんは新刊の「エマニュエル・トッドの思考地図」(筑摩書房刊)の中で、コロナ後の社会に関する予測を述べています(2020年5月時点)。箇条書きにまとめてみると次のようになります。なお、トッドさんは人口統計を読み解くことでソ連邦の崩壊やアメリカの覇権の衰退を予測したとして有名です。

・コロナ以前の傾向がより明確になり加速されるが、コロナ自体で何か新しいことが起こるわけではない。
・アメリカやイギリスの国家の力を取り戻そうとする動きは強まる。フランスにもその動きが現れるかもしれない。中国とアメリカの関係はさらに悪化。
・ユーロ政策失敗の影響が深刻化。フランスでは貧困化が進み、社会経済的な衝突が起こる。
・不平等の拡大が支配層の正当性を破壊。フランスの公衆衛生の破綻は政府への反抗の動きにつながる可能性がある。

 さて、トッドさんは日本についても触れています。「表面的にはうまく収束を迎えることができるかもしれませんが、そうした場合、内部で人々のある程度の満足感が得られることにより、これまでよりもさらに、高齢者を救うことよりも子どもを産むことのほうが大切であるという事実を見えなくさせてしまう可能性はあるでしょう。そうして、思想的にまどろんだような状態がますます強化されるのではないでしょうか。」

 予測は歴史や経験に基づきながらも、データの裏付けはなく、最後は本能的、直感的に将来をイメージすることと語るトッドさん。その意味ではリスクを負う勇気が求められるわけですが、この本を次の言葉で結んでいます。「リスクを負えるかどうかは、その性格以上に、その人自身が社会にどのように関わっているかということにかかっているのです。」社会を所与のものとせず、問題意識を持って社会を見つめる、まどろわない思考が基盤にあることを感じさせる言葉だと思います。

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