花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

リベラリストの肖像

2006-07-16 22:19:28 | Book
 「いったいいつから、批判するとかのりこえるとか、精神を継承するとかしないとか、剣呑な言葉でしか、過去の思想は語られなくなってしまったのだろう。」「ひとりの人間が深くものを考え、語った営みは、そんなに簡単にまつりあげたり、限界を論じたりできるほど、安っぽいものではないはずなのに。」「この本でこころみたのは、丸山眞男という稀有な知性がのこした言葉の群れのなかへわけいって、・・・珠玉や棒きれや落とし穴を、できるかぎり克明に記し、それぞれと出あった驚きを、読んでくれる方々とともにすることである。」
 以上は、岩波新書の「丸山眞男」(苅部直著)のあとがきからである。評伝、特に文化人の評伝において、他人の家に土足で上がり込むような品格に欠けるものや、評者の空威張りや人を小ばかにした態度が透けてみえるようなものがあり、後味の悪い思いをすることが時々あったが、この本はそのようなところが全然なく、丸山眞男が思想と真摯な格闘をした人であることを改めて知ることが出来た。
 「漱石という生き方」の著者、秋山豊氏が「漱石に寄り添うように」漱石の文章を読み込んでいったの同様、苅部氏も「丸山眞男に寄り添うように」丸山眞男のメッセージを読み込んでいる。学生運動のさなか、学生につるし上げのようなかたちで糾弾された丸山眞男が、学生たちのルールを無視した追及の仕方を批判して「人生は形式です」と言ったエピソードを紹介するなど、苅部氏は随所で丸山眞男が形にこだわったことに触れているが、氏自身にもきちんとした形が備わっていることが感じられた。
 今年は、丸山眞男没後10年にあたるので、丸山眞男の著作を読み返し、人生に必要な形式とは何かについて考えてみようと思う。

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