『なぜ、日本人の金融行動がこれから大きく変わるのか?』より おひとりさま女性(成長セグメント)
2020年には1600万人の巨大マーケットヘ
40歳以上で配偶者のいない人(おひとりさま)は、2013年時点で男女合わせて2409万人、うち女性は1493万人と推計される。おひとりさま女性の年代内訳は40代~50代が30%、60代~70代が39%、そして80歳以上が31%である。全体としては既に巨大なマーケットを形成しているおひとりさま女性であるが、その数は増え続ける。2020年にはおひとりさま女性は1665万人となり、日本の人口の15%を占めるに至る(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」より)。
ここでは、金融サービスの主な対象となる40代~70代のおひとりさま女性に注目し、その金融ニーズを明らかにしていく。なお、おひとりさま男性を取り上げない理由については、性・年代・配偶状況別に見た自分で管理・運用する金融資産の総額(以下、管理金融資産)を参照いただきたい。男性はすべての年代において、おひとりさま男性よりも配偶者のいる男性の管理金融資産が多いが、女性は40代の未婚、60代の離別および死別、70代の死別が配偶者のいる女性のそれを上回っている。つまり、金融機関が男性をターゲットとするなら、おひとりさま男性よりも配偶者のいる男性、女性をターゲットとするなら、ミドルは未婚、シニアは死別を狙うべきということである。
話をおひとりさま女性に戻そう。おひとりさま女性といっても、年代によっておかれている環境や育ってきた時代背景が異なるため、はじめにそれぞれの特徴を概観しておこう。
40代~50代のミドルおひとりさま女性は、離別と未婚で大半を占め、60~70代のシニアは約3分の2が死別で離別がこれに続く。ミドルとシニアでは「おひとり」の理由が異なっている。子どもがいる割合は、ミドルの未婚おひとりさま女性を除き80%以上となっている。自分の親と同居している割合は、ミドルの未婚おひとりさま女性が35%と高くなっている。「おひとりさま」という言葉からひとり暮らしの女性だけを思い浮かべるかもしれないが、配偶関係や家族構成は多様である。
おひとりさま女性のインターネット利用率には、年代による差が大きく出ている。たとえば、ほぼ毎日インターネットを利用する「デジタル派」の割合は、ミドルの未婚おひとりさま女性は7割を超えるが、シニアは2割に満たない。ネットショッピングやSNSの利用率でも同様にミドルとシニアで差がある。ミドル層においては、未婚のおひとりさま女性のネット利用率が高い点が目立つが、シニア層では同年代の配偶者のいる女性と大きな差はない。全体の傾向としては、ミドルおひとりさま女性はデジタル、シニアおひとりさま女性はアナログということになる。
未婚のおひとりさま女性が抱く将来不安
40代~50代のミドル女性は、1986年の男女雇用機会均等法制定以降に社会人となり、総合職として働き始めた女性を含む世代である。また、80年代後半のバブル経済を経験した人も多く、百貨店や旅行業界では今でもメインターゲットである。ミドル女性の金融サービスにおける有望度を検証するために、未婚、離別、配偶者ありで違いを見てみる。
ミドル女性の個人年収を多い順に並べると、未婚305万円、離別257万円、配偶者あり116万円となっている。配偶者のいる女性は、専業主婦・無職率が高く、有職者であってもパート・アルバイトが多いため平均の年収は低くなっていると考えられる。
次に、おひとりさま女性の中で、未婚と離別の金融ポテンシャルの違いに注目してみたい。自分で管理・運用する金融資産の額は、未婚が755万円、離別398万円と大きな差がある。年収では未婚と離別の差が50万円程度であったが、資産面での差が顕著である。離別おひとりさまは、生活の程度が「中の下」以下が66%と高くなっており、楽ではない生活の様子がうかがえる。離別と未婚の格差の原因としては、離別おひとりさまの82%は子どもがおり扶養家族が多いこと、未婚おひとりさまの35%は親と同居(離別は19%)しており収入を貯蓄に回しやすいことがあげられる。
金融行動をみてみると、未婚のおひとりさまは、デジタル派率(毎日インターネット利用率)が高いため、ネットバンク利用率も26%と高い。また、離別おひとりさまは投資商品保有率が低い(13%)が、未婚おひとりさまは22%と高い(配偶者のいる女性は18%)。
ミドル女性の中では、仕事を持ち、自分で管理・運用する金融資産が多く、ネットを積極的に利用する未婚のおひとりさまが有望と言えそうである。
彼女たちは金融ポテンシャルが高い一方で、現在、直面している不安や悩みも多い。その内容は、「職場における人間関係」や「雇用・失業」といった仕事に関すること、また、「自分の健康」、「親の介護」、「自分が要介護になること」などである。ひとりで生きていくために仕事をやめられないからこその悩み、将来の収入および健康について、配偶者のいる女性以上に不安を抱えて生活しているといえる。
では、不安に対する備えはどの程度行われているだろうか。未婚おひとりさまの医療保険加入率は55%と高いが、配偶者のいる女性も56%と大差ない(離別おひとりさまはやや低く48%)。介護付き老人ホームに関心がある割合は、未婚おひとりさまは42%(配偶者のいる女性は35%)と高くなっている。総じて、将来不安から老後への準備の関心は高いが、まだ行動に移していない未婚おひとりさまが多いようだ。
女性を意識した金融サービスは存在するものの、未婚のおひとりさま女性へのアピールという面では、もう一段の工夫が必要であろう。たとえば、女性向け住宅ローンについては、従来は、出産・育児休業中の金利優遇や宿泊施設・レジャーなどの優待といった「女性ならでは」の優遇や「女性好み」のサービスが付加されていた。しかし、一定以上の収入があり、働きながら親の介護や老後の不安を抱える未婚のおひとりさま女性に対しては、「収入保障」や「親の介護サポート」といった将来不安に応えるようなサービスを付加していくべきであろう。
2020年には1600万人の巨大マーケットヘ
40歳以上で配偶者のいない人(おひとりさま)は、2013年時点で男女合わせて2409万人、うち女性は1493万人と推計される。おひとりさま女性の年代内訳は40代~50代が30%、60代~70代が39%、そして80歳以上が31%である。全体としては既に巨大なマーケットを形成しているおひとりさま女性であるが、その数は増え続ける。2020年にはおひとりさま女性は1665万人となり、日本の人口の15%を占めるに至る(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」より)。
ここでは、金融サービスの主な対象となる40代~70代のおひとりさま女性に注目し、その金融ニーズを明らかにしていく。なお、おひとりさま男性を取り上げない理由については、性・年代・配偶状況別に見た自分で管理・運用する金融資産の総額(以下、管理金融資産)を参照いただきたい。男性はすべての年代において、おひとりさま男性よりも配偶者のいる男性の管理金融資産が多いが、女性は40代の未婚、60代の離別および死別、70代の死別が配偶者のいる女性のそれを上回っている。つまり、金融機関が男性をターゲットとするなら、おひとりさま男性よりも配偶者のいる男性、女性をターゲットとするなら、ミドルは未婚、シニアは死別を狙うべきということである。
話をおひとりさま女性に戻そう。おひとりさま女性といっても、年代によっておかれている環境や育ってきた時代背景が異なるため、はじめにそれぞれの特徴を概観しておこう。
40代~50代のミドルおひとりさま女性は、離別と未婚で大半を占め、60~70代のシニアは約3分の2が死別で離別がこれに続く。ミドルとシニアでは「おひとり」の理由が異なっている。子どもがいる割合は、ミドルの未婚おひとりさま女性を除き80%以上となっている。自分の親と同居している割合は、ミドルの未婚おひとりさま女性が35%と高くなっている。「おひとりさま」という言葉からひとり暮らしの女性だけを思い浮かべるかもしれないが、配偶関係や家族構成は多様である。
おひとりさま女性のインターネット利用率には、年代による差が大きく出ている。たとえば、ほぼ毎日インターネットを利用する「デジタル派」の割合は、ミドルの未婚おひとりさま女性は7割を超えるが、シニアは2割に満たない。ネットショッピングやSNSの利用率でも同様にミドルとシニアで差がある。ミドル層においては、未婚のおひとりさま女性のネット利用率が高い点が目立つが、シニア層では同年代の配偶者のいる女性と大きな差はない。全体の傾向としては、ミドルおひとりさま女性はデジタル、シニアおひとりさま女性はアナログということになる。
未婚のおひとりさま女性が抱く将来不安
40代~50代のミドル女性は、1986年の男女雇用機会均等法制定以降に社会人となり、総合職として働き始めた女性を含む世代である。また、80年代後半のバブル経済を経験した人も多く、百貨店や旅行業界では今でもメインターゲットである。ミドル女性の金融サービスにおける有望度を検証するために、未婚、離別、配偶者ありで違いを見てみる。
ミドル女性の個人年収を多い順に並べると、未婚305万円、離別257万円、配偶者あり116万円となっている。配偶者のいる女性は、専業主婦・無職率が高く、有職者であってもパート・アルバイトが多いため平均の年収は低くなっていると考えられる。
次に、おひとりさま女性の中で、未婚と離別の金融ポテンシャルの違いに注目してみたい。自分で管理・運用する金融資産の額は、未婚が755万円、離別398万円と大きな差がある。年収では未婚と離別の差が50万円程度であったが、資産面での差が顕著である。離別おひとりさまは、生活の程度が「中の下」以下が66%と高くなっており、楽ではない生活の様子がうかがえる。離別と未婚の格差の原因としては、離別おひとりさまの82%は子どもがおり扶養家族が多いこと、未婚おひとりさまの35%は親と同居(離別は19%)しており収入を貯蓄に回しやすいことがあげられる。
金融行動をみてみると、未婚のおひとりさまは、デジタル派率(毎日インターネット利用率)が高いため、ネットバンク利用率も26%と高い。また、離別おひとりさまは投資商品保有率が低い(13%)が、未婚おひとりさまは22%と高い(配偶者のいる女性は18%)。
ミドル女性の中では、仕事を持ち、自分で管理・運用する金融資産が多く、ネットを積極的に利用する未婚のおひとりさまが有望と言えそうである。
彼女たちは金融ポテンシャルが高い一方で、現在、直面している不安や悩みも多い。その内容は、「職場における人間関係」や「雇用・失業」といった仕事に関すること、また、「自分の健康」、「親の介護」、「自分が要介護になること」などである。ひとりで生きていくために仕事をやめられないからこその悩み、将来の収入および健康について、配偶者のいる女性以上に不安を抱えて生活しているといえる。
では、不安に対する備えはどの程度行われているだろうか。未婚おひとりさまの医療保険加入率は55%と高いが、配偶者のいる女性も56%と大差ない(離別おひとりさまはやや低く48%)。介護付き老人ホームに関心がある割合は、未婚おひとりさまは42%(配偶者のいる女性は35%)と高くなっている。総じて、将来不安から老後への準備の関心は高いが、まだ行動に移していない未婚おひとりさまが多いようだ。
女性を意識した金融サービスは存在するものの、未婚のおひとりさま女性へのアピールという面では、もう一段の工夫が必要であろう。たとえば、女性向け住宅ローンについては、従来は、出産・育児休業中の金利優遇や宿泊施設・レジャーなどの優待といった「女性ならでは」の優遇や「女性好み」のサービスが付加されていた。しかし、一定以上の収入があり、働きながら親の介護や老後の不安を抱える未婚のおひとりさま女性に対しては、「収入保障」や「親の介護サポート」といった将来不安に応えるようなサービスを付加していくべきであろう。