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経済の「権利章典」

『経済成長って、本当に必要なの?』より

1 人々に時間のゆとりを与える

 a すべての労働者に三週間の有給休暇を義務づける(パートタイムの人には勤務時間に比例して配分する)。

 b ドイツの「時短就労」のようなワークシェアシステムを導入する。それによって労働時間を増やさずに失業率を減らす。

 c ヨーロッパ諸国のように、パートタイム労働者に、正規雇用と同等の時給と、労働時間に応じた福利厚生を与える。

 d オランダのように、労働者に労働時間を減らす権利を与え、そのことが解雇、時給、昇進機会、医療保険などに影響しないようにする。他の福利厚生は労働時間に応じて減らす。

 e 残業を強制することを禁じ、フィンランドのように残業分は二倍の時給を払う。

 f 国民の休日はすべての労働者が休めるようにすることを義稗づける。勤務しなければならない人には特別の報酬を支払う。

 g 中小企業にはこれらの変革が財政的負担にならないように、税制の優遇やその他のインセンティブを与える。

2 誕生時から、生きる機会を改善する

 a すべての妊産婦に、産前産後のケアを提供する。

 b 産後六ヵ月の有給育児休暇を義務づける。最低でも現行の給与の半額を支払うが、雇用主が直接支払うのではなく、カナダのように、政府が多少累進的に給料を減額する形で支払う。

3 健康的な国をつくる

 a 基本的な公的医療保険をすべての国民に提供し、カナダの例のように、追加的に民間保険を利用する。

 b 健康的な行動に税制面のインセンティブを与え、不健康な食品や行動に対して増税する。

 c 公的助成金を、不健康な食品や持続不可能な農業から徐々に取り上げ、地域のオーガニックで持続可能な食糧生産を促進する方向に、慎重に移行させていく。

 d すべての学校に体育の授業を実施させる。

 e スウェーデンやカナダのケベック州のように、コー歳未満の子どもをターゲットにしたテレビコマーシャルを禁止して、子どもたちを守る。

4 中流階層を拡大する

 a より累進的な課税システムを設け、富裕層や企業が税金を免れる抜け道を少なくする(二〇一〇年、GEは一四〇億ドルの利益に対して税金を払っていない)。

 b それぞれの州や都市ごとに、生活費の多様性を反映した「生活賃金」を設定する。

 c 最高利息の規制を復活させる。ローンの利息はインフレ率に一定パーセントを上乗せしたものを上限とする。

 d 政府の助成金を増額して教育にかかる費用を減らし、大学教育を庶民の手の届くものにする。

 e デンマークのように、企業の人員整理の柔軟性は確保しながら、失業者に対する支援を手厚くする。

 f 企業年金プログラムの課税上限および税金の優遇措置をなくし、社会保障制度を強化する。一方で社会保障給付レペルをヨーロッパ諸国の平均並みに引き上げる。

8 新しいエネルギーのインフラストラクチャーを整備する

 a 地域の、低炭素、再生可能、脱化石燃料のエネルギー開発に、公共および民間投資を一兆ドルまで段階的に増やしていく。その財源は炭素税とする。

 b 政策および低金利融資によって、エネルギー効率向上を積極的に推し進め、現行のインフラストラクチャーと製品の改良を図り、また新規に生みだす。

 c 低品質エネルギーを活用する(たとえばデータセンターの冷却用蒸気の廃熱を、温室の暖房や地域暖房に使う)。

9 コミュニティを強化し、移動手段を改善する

 a 公共サービスの拡大を必要とする都市のスプロール化に課税する。また、基準を超えた大型住宅に課税する。同時に、環境に配慮した建物、小さめの家、公共交通、歩行者や自転車のためのインフラ整備に、インセンティブを与える。

 b 近代的な鉄道システムに資金を投じる。自動車使用にコストがかかるようにして、その資金源とする。道路建設の優先度を下げる。

 c 交通システムを電化する(電気バス、電車、その他の電気の乗り物など)。

10 政治を改革する

 a 憲法を改正し、企業の選挙資金提供を禁止する。テレビを使った選挙運動を制限する。

 b 企業に「労使の共同決定」を義務づける。少なくとも役員の三分の一が労働者の代表になるようにする。
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持続可能性のパラドクス

『経済成長って、本当に必要なの?』より

現代の人間は、人類史上もっとも繁栄し、強大な力を誇っている。人口はこれまでになく増え、暮らしは豊かで、偉大な技術を持つ。しかしこの成功と巨大な人口が、人間が依存する地球システムを狂わせようとしている。「人類の成功が、その成功の持続可能性を脅かす」という持続可能性のパラドクスに私たちは直面しているのである。

以下の事実はすべて「持続可能性のパラドクス」である。生産、消費、資源利用、ゴミの廃棄がもたらす地球への負荷を、これ以上増やすことはもはや不可能だということがよくわかる。

 ・世界にはほぼ七〇億人が暮らしていて、それぞれがみな資源を必要とする。

 ・大気、海水、陸地すべての温度が上がっていて、砂漠の拡大、海岸水没、熱帯の疫病蔓延、そのほかさまざまな問題が深刻化してい折。

 ・農業と牧畜が、すでに地球の陸地部分の二四八Iセントを使ってい折。

 ・世界の漁獲量は、一九八〇年代後半にピークを迎えた。今は漁業の四分の一は乱獲である。

 ・淡水の不足は急激に深刻化していて、飲料水、濯漑、工業用水の不足が懸念される。

 ・世界の原油産出量は二〇〇五年から増えておらず、今後減少すると予測される。

 ・二五カ国がすでに、樹木を伐採し尽くした。

 ・人間による水の消費が、ナイル川、黄河、コロラド川など、いくつもの大河を干上がらせている。

 ・工業化学物質がオゾン層を損傷しており、皮膚がん罹患率が上がっている。

 ・人間の営みが原因で生じる種の絶滅は、地質学史上最大のスピードで進んでおり、それは自然に起こるスピードの一〇○○倍である。

 ・ハリケーンや台風がどんどん巨大になり、頻度も増している。

 ・有害工業物質は、すべての人々の身体から検出されてい折。

 ・世界的に食糧の値段が高騰する一方で、世界には栄養が十分にとれない人が一〇億人もいる。’

人類はパラドクスに直面している。豊かさを生みだした経済は今、その豊かさを支えてきた環境システムそのものを劣化させている。現在の経済を、石油や化石燃料から再生可能な資源に移行させ、水を保全し、生物多様性を守るには、莫大な投資が必要である。

さてその資金をどうやって確保すればいいか。金融が今ほど安っぽい時代はこれまでなかった。まず、投機に流れる何兆ドルもの金を、正しい会計とインセンティブを伴った本物の投資に動かすことだ。次に問題に見合った規模の機関を創設し、問題解決のための資金を集めるメカニズムを持たせる。さらに、税制を変えて財政を動かし、環境の分野で雇用を生みだして、転換を実現させる。

「持続可能性のパラドクス」の解決とは、何か今の問題を生みだしているかを突き止めることではない。すでによくわかっている対処法を実行すると決心することだ。最初は損失が生じるが、それはやがて、誰もがよりよい生活ができるという素晴らしい結果となって埋め合わせられる。「持続可能な経済」をめざすことへの反論はただ一つで、それは、「金がかかりすぎる」ということだ。しかしその反論は概して、現実に即さない会計と、コスト全体の誤った計算に基づいている。

人類は、個人の規模でも地球規模でも脅威に直面していて、新たなよりよい経済への移行はもはや待ったなしだ。これまでと同じ「経済成長」を求めることは、その解決策にはならない。それに、新たなよりよい経済を短期間で作ることは決して不可能ではない。この後の二章で明らかにするように、わが国はすでにそれをやってきたからだ。どうやってこの国がここまで来たか、今の経済を作り上げた経済的視点とはどういうものか、どうすれば持続可能性と幸福をめざす経済へ移行できるか、などを知るために、次章ではアメリカ経済の歴史を少し見ていきたいと思う。
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フィンランドの成功の秘密

『経済成長って、本当に必要なの?』より

フィンランドのヒルッカ・ピエティラ教授は、フィンランドの繁栄を可能にしたのは平等であると主張する。「まず初めに国が豊かにならなければ国民を幸福にはできない、と一般には考えられている。だが北欧の歴史を見れば、そうとは限らないということがわかる。人々の幸福を作り上げていくことによって国家の豊かさが築かれたのである」

ピエティラは、一九四〇年代、五〇年代には、フィンランドは豊かではなかったことを指摘する。第二次世界大戦で破壊され、北半分はドイツ軍によって焼け野原にされた。おまけに戦後は、ソ連に賠償金支払いを強いられた。フィンランドは、強大な力を持つ隣国ソ連を刺激することを怖れ、援助を提供するアメリカの「マーシャルプラン(欧州復興計画)」も断って、冷戦中は中立を保っていた。とっていた。以前、TVの「60ミニッツ」というニュース番組の中で、フィンランド人を「世界で最も憂僻な人々」と紹介していたことがある。確かに、暗い冬のせいで季節的な感情障害やアルコール中毒に悩まされる人々は今でもいるが、昔の貧しく陰気な国と言われていた(たぶんある程度は本当だった)フィンランドと、今の幸福で豊かな国を比べると、その違いはまるで夜と昼のようだ。

女性運動の盛り上がりに導かれ、国家としての自立と存続を求める強い決意をもって、フィンランド人は、欧米式の経済偏重とソ連式の自由の制約のどちらでもない、その中道による発展を選択した。ピエティラによれば、「フィンランドは国が貧しかったにもかかわらず、世界でもトップレペルの手厚い社会保障制度を作り始めた。その目的は経済を発展させながら同時に貧困をなくすことだった。経済と福祉は相互に支見合って伸びていった。国民の生活がよくなると健康で能力の高い労働力が生まれ、経済発展の結果は社会的便益の形で人々に再配分された」のだという。

「社会的便益の形で」というところがみそだ。フィンランド人は単にカネをばらまいたりしなかった。十分な資金を投入した公共サービス(子どもの養育手当、子ども一人当たり四四週間の有給育児休暇、確定給付年金、大学まで無料の教育、無料の医療、無料の学校給食、公共交通への補助金、無料の保育所、老人介護への補助金、高い最低賃金、手厚い失業手当など)が、人口比が世界最大の中流階層と、有能な労働力を生みだした。フィンランドは残業を強制することを法的に禁じている世界でたったニカ国のうちの一つだ。また彼らは世界で最長の有給休暇を取る。それでいて彼らは驚くほどに生産的である。ピエティラは、続けてこう述べている。

「フィンランドの福祉制度は、生涯にわたる社会保険である。何か起ころうと、子どもが教育を受けられなくなったり、人が親戚や慈善団体の情けにすがって生きなければならなかったり、病気や事故、失業や破産などに見舞われた人が見捨てられたりすることは決してない。老人は誰もが年金と介護を受けることができる……y」の成功は、アメリカの福祉の概念とはまったく異なる考え方のもとに成り立っている。アメリカでは、福祉の世話になっているというのは恥辱である。またどんな福祉が受けられるかはコネによっても決まる。フィンランドのシステムが根本的に違うのは、福祉給付金やサービスは市民の権利であって、国に永住する人すべてがその権利を行使する資格があるということだ」

健康で十分な教育を受けたフィンランド人は、働く時は非常に生産的である。しかし彼らは、家族とレジャーを大切にする。どこにいてもサウナはすぐそばにあるし、誰もが夏の休暇をリラックスして過ごす小さなキャビンを近くに持っている。しかしもちろん、「世界で最もいい国」であるためには金がかかる。「フィンランド人の福祉制度は、高度に累進課税される所得税によって成り立っている」とピエティラは書いている。
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豊田市図書館の12冊

未唯へ

 やっと、帰ってくるみたいです。まずは笑顔ですね。午前中までにすべてを読み終えて、実践します。午後からそれを行います。まずは、数を稼げる方を先に行います。第8章には時間を掛けます。

 何となく、頭が痛いです。というよりも、だるいです。多分、寝不足ですね。起きているのか寝ているのか分からない状態が続いています。

未唯宇宙のための道具

 アウトラインを未唯宇宙のための道具にしていかないと。反映もそのために行ってきた.マルチバースと独我論を何でつなげるか。

ザ・ロック

 ジブラルタルのザ・ロックをテレビでやっていた。あれが地中海の栓をしていた名残なんでしょう。あの岩のてっぺんからジブラルタルを見てみたい。そうすれば、栓がイメージでき、歴史のコード化のイメージが分かります。

 イギリスの軍事基地があるので、通常の手続きは難しそうです。スペインとイギリス、そして、モロッコが混在している。

 本当に海外へ旅立ちたい。

豊田市図書館の12冊

 月初なのか、冊数が少ないうえに、6時過ぎに行ったので、まるで、新刊書がない。インパクトがない。

 332『国家はなぜ衰退するのか 上』権力・反映・貧困の起源

 332『国家はなぜ衰退するのか 下』

 576.7『部下の心を1分で動かすマネジメントレターの秘密』

 332.22『それでも中国は巨大な成長を続ける』

 141.6『正義という名の正義』

 596『成城石井のスーパー惣菜』家で作る

 451.85『気候変動』インフォグラフィックス

 366.02『「正社員」の研究』

 319.1『終わらない<占領>』対米自立と日米安保見直しを提言する!

 367.68『若者問題の社会学』視線と射程

 290.9『秘境添乗員』

 910.26『ラノベのなかの現代日本』ポップ/ぼっち/ノスタルジア

 土曜日に完了してしまった。
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