未唯への手紙
未唯への手紙
持続可能性のパラドクス
『経済成長って、本当に必要なの?』より
現代の人間は、人類史上もっとも繁栄し、強大な力を誇っている。人口はこれまでになく増え、暮らしは豊かで、偉大な技術を持つ。しかしこの成功と巨大な人口が、人間が依存する地球システムを狂わせようとしている。「人類の成功が、その成功の持続可能性を脅かす」という持続可能性のパラドクスに私たちは直面しているのである。
以下の事実はすべて「持続可能性のパラドクス」である。生産、消費、資源利用、ゴミの廃棄がもたらす地球への負荷を、これ以上増やすことはもはや不可能だということがよくわかる。
・世界にはほぼ七〇億人が暮らしていて、それぞれがみな資源を必要とする。
・大気、海水、陸地すべての温度が上がっていて、砂漠の拡大、海岸水没、熱帯の疫病蔓延、そのほかさまざまな問題が深刻化してい折。
・農業と牧畜が、すでに地球の陸地部分の二四八Iセントを使ってい折。
・世界の漁獲量は、一九八〇年代後半にピークを迎えた。今は漁業の四分の一は乱獲である。
・淡水の不足は急激に深刻化していて、飲料水、濯漑、工業用水の不足が懸念される。
・世界の原油産出量は二〇〇五年から増えておらず、今後減少すると予測される。
・二五カ国がすでに、樹木を伐採し尽くした。
・人間による水の消費が、ナイル川、黄河、コロラド川など、いくつもの大河を干上がらせている。
・工業化学物質がオゾン層を損傷しており、皮膚がん罹患率が上がっている。
・人間の営みが原因で生じる種の絶滅は、地質学史上最大のスピードで進んでおり、それは自然に起こるスピードの一〇○○倍である。
・ハリケーンや台風がどんどん巨大になり、頻度も増している。
・有害工業物質は、すべての人々の身体から検出されてい折。
・世界的に食糧の値段が高騰する一方で、世界には栄養が十分にとれない人が一〇億人もいる。’
人類はパラドクスに直面している。豊かさを生みだした経済は今、その豊かさを支えてきた環境システムそのものを劣化させている。現在の経済を、石油や化石燃料から再生可能な資源に移行させ、水を保全し、生物多様性を守るには、莫大な投資が必要である。
さてその資金をどうやって確保すればいいか。金融が今ほど安っぽい時代はこれまでなかった。まず、投機に流れる何兆ドルもの金を、正しい会計とインセンティブを伴った本物の投資に動かすことだ。次に問題に見合った規模の機関を創設し、問題解決のための資金を集めるメカニズムを持たせる。さらに、税制を変えて財政を動かし、環境の分野で雇用を生みだして、転換を実現させる。
「持続可能性のパラドクス」の解決とは、何か今の問題を生みだしているかを突き止めることではない。すでによくわかっている対処法を実行すると決心することだ。最初は損失が生じるが、それはやがて、誰もがよりよい生活ができるという素晴らしい結果となって埋め合わせられる。「持続可能な経済」をめざすことへの反論はただ一つで、それは、「金がかかりすぎる」ということだ。しかしその反論は概して、現実に即さない会計と、コスト全体の誤った計算に基づいている。
人類は、個人の規模でも地球規模でも脅威に直面していて、新たなよりよい経済への移行はもはや待ったなしだ。これまでと同じ「経済成長」を求めることは、その解決策にはならない。それに、新たなよりよい経済を短期間で作ることは決して不可能ではない。この後の二章で明らかにするように、わが国はすでにそれをやってきたからだ。どうやってこの国がここまで来たか、今の経済を作り上げた経済的視点とはどういうものか、どうすれば持続可能性と幸福をめざす経済へ移行できるか、などを知るために、次章ではアメリカ経済の歴史を少し見ていきたいと思う。
現代の人間は、人類史上もっとも繁栄し、強大な力を誇っている。人口はこれまでになく増え、暮らしは豊かで、偉大な技術を持つ。しかしこの成功と巨大な人口が、人間が依存する地球システムを狂わせようとしている。「人類の成功が、その成功の持続可能性を脅かす」という持続可能性のパラドクスに私たちは直面しているのである。
以下の事実はすべて「持続可能性のパラドクス」である。生産、消費、資源利用、ゴミの廃棄がもたらす地球への負荷を、これ以上増やすことはもはや不可能だということがよくわかる。
・世界にはほぼ七〇億人が暮らしていて、それぞれがみな資源を必要とする。
・大気、海水、陸地すべての温度が上がっていて、砂漠の拡大、海岸水没、熱帯の疫病蔓延、そのほかさまざまな問題が深刻化してい折。
・農業と牧畜が、すでに地球の陸地部分の二四八Iセントを使ってい折。
・世界の漁獲量は、一九八〇年代後半にピークを迎えた。今は漁業の四分の一は乱獲である。
・淡水の不足は急激に深刻化していて、飲料水、濯漑、工業用水の不足が懸念される。
・世界の原油産出量は二〇〇五年から増えておらず、今後減少すると予測される。
・二五カ国がすでに、樹木を伐採し尽くした。
・人間による水の消費が、ナイル川、黄河、コロラド川など、いくつもの大河を干上がらせている。
・工業化学物質がオゾン層を損傷しており、皮膚がん罹患率が上がっている。
・人間の営みが原因で生じる種の絶滅は、地質学史上最大のスピードで進んでおり、それは自然に起こるスピードの一〇○○倍である。
・ハリケーンや台風がどんどん巨大になり、頻度も増している。
・有害工業物質は、すべての人々の身体から検出されてい折。
・世界的に食糧の値段が高騰する一方で、世界には栄養が十分にとれない人が一〇億人もいる。’
人類はパラドクスに直面している。豊かさを生みだした経済は今、その豊かさを支えてきた環境システムそのものを劣化させている。現在の経済を、石油や化石燃料から再生可能な資源に移行させ、水を保全し、生物多様性を守るには、莫大な投資が必要である。
さてその資金をどうやって確保すればいいか。金融が今ほど安っぽい時代はこれまでなかった。まず、投機に流れる何兆ドルもの金を、正しい会計とインセンティブを伴った本物の投資に動かすことだ。次に問題に見合った規模の機関を創設し、問題解決のための資金を集めるメカニズムを持たせる。さらに、税制を変えて財政を動かし、環境の分野で雇用を生みだして、転換を実現させる。
「持続可能性のパラドクス」の解決とは、何か今の問題を生みだしているかを突き止めることではない。すでによくわかっている対処法を実行すると決心することだ。最初は損失が生じるが、それはやがて、誰もがよりよい生活ができるという素晴らしい結果となって埋め合わせられる。「持続可能な経済」をめざすことへの反論はただ一つで、それは、「金がかかりすぎる」ということだ。しかしその反論は概して、現実に即さない会計と、コスト全体の誤った計算に基づいている。
人類は、個人の規模でも地球規模でも脅威に直面していて、新たなよりよい経済への移行はもはや待ったなしだ。これまでと同じ「経済成長」を求めることは、その解決策にはならない。それに、新たなよりよい経済を短期間で作ることは決して不可能ではない。この後の二章で明らかにするように、わが国はすでにそれをやってきたからだ。どうやってこの国がここまで来たか、今の経済を作り上げた経済的視点とはどういうものか、どうすれば持続可能性と幸福をめざす経済へ移行できるか、などを知るために、次章ではアメリカ経済の歴史を少し見ていきたいと思う。
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