安倍元総理がオリンピック誘致の際、世界に向けて発信した「福島原発は
コントロール下にある」は大嘘であるが、それを信じた日本国民も少なから
ず存在した。
また、昨年から「処理水の海洋放出」が始まり廃炉作業は順調に進んでい
かのように受け止めている国民も少なくない。
その誤解は「原発再稼働に不都合な事実」が意図的に隠されていることと
無縁ではない。
結果的に「原発再稼働容認」の世論の割合が増えつつある現状となっている。
そんな中、今朝の毎日新聞は社説で「廃炉作業が殆ど進展していない」こと
を報じていた。
毎日新聞社説(2024.3.12)
「福島原発の廃炉計画 困難な現実を直視せねば」
東日本大震災から13年が過ぎた。しかし、事故を起こした東京電力福島
第1原発の廃炉作業は思うように進んでいない。
津波によって電源が喪失し、1~3号機で原子炉の炉心溶融(メルトダウン)
が起きた。1、3、4号機では水素爆発が発生した。
政府と東電は、2051年までに廃炉を完了するという工程表を掲げる。
現段階では、作業を進めるうえで必要な、処理水の海洋放出が始まった
ばかりだ。
通常の原発とは異なり、事故原発の廃炉は困難を極める。溶け落ちた核
燃料が固まった「燃料デブリ」や、大量のがれきの処理が必要だからだ。
最難関とされるのが、計880トンに上ると推計される燃料デブリの取り
出しだ。
21年までの開始を目指していたが、今も見通しが立っていない。
放射線量が非常に高く、人が近づけない。遠隔操作での処理が必要となる
が、原発内の状態を把握しにくく、ロボットの開発にも手間取っている。
東電は、3度の延期を経て、今年10月までに試験的な取り出しに着手する
予定としているが、全体については方法も含めていまだに検討段階にある。
海外でも、過去にメルトダウンを起こした原発の廃炉作業は難航している。
1979年に事故が発生した米国のスリーマイル島原発では、燃料デブリの
一部が残されたままだ。
旧ソ連のチェルノブイリ原発は、事故から40年近くたった現在も、鋼鉄製
のカバーで覆われているだけだ。
福島第1原発の工程表は、事故後9カ月で策定されて以降、骨格部分は見直
されていない。
多くの専門家が、当初から計画の実現可能性に疑問を呈していた。
原発の状況は予断を許さない。昨年、1号機の土台が大きく損傷している
ことが分かった。
再び大地震が起きれば、施設が壊れ、放射性物質が拡散する恐れがある。
政府と東電は、廃炉計画の前に立ちはだかる困難な現実を直視しなければ
ならない。
見通しが立たなければ、地元住民の不安は解消されず、帰還も進まない。
どのような「廃炉」を目指すのか。最終的な形と、その道筋を示す責任が、
政府と東電にはある。