仙台高裁での控訴審でも裁判長(三人の裁判官の筆頭)から「JAから仕入れ
ても利益をあげたら組合員の共同利益に十分に貢献しているのではないか。」
との指摘があった。
しかし、法が規定する農事組合法人の設立目的の「組合員の共同利益の増
進」の具体的中身は「組合員の生産物を販売して利益を得る」ことであり、
構成員もそれを期待して組合員となっている。
株式会社の株主のように利益配当を期待して加入している訳ではない。
その違いを明確にするため具体例を示す。
年間8tの餅米をJAから400万円で仕入れ、利益率3割で120万円の
利益を出したとしても、2%の利益配当で24千円、組合員200人に分配
すると一人当たり120円にしかならない。
一方、餅米を組合員から仕入れた場合は、組合員の売上400万円、利益率
3割で120万円となり、組合員一人当たり6千円の利益となる。
この組合員の利益は全体の収支が赤字の場合も変わるものではないことか
ら、「JA仕入れで共同利益に貢献している」とする理事長等の主張が詭弁で
しかなく、逆に組合員に損害を与えているのである。
しかも、組合員から仕入れた場合、価格がJAよりも安いだけでなく13%の
手数料収入も組織に入ることから、利益配当も更に上乗せされることは言うま
でもない。
市や県、そして法律の専門家である検察官や裁判官がこの欺瞞を見破れなか
ったのは、農事組合法人と株式会社の「組織目的の違い」を明確に理解してい
ないためである。