5月に入ってからというもの、大西順子に始まりキョロシー、コスタ、ジュディベリ、サダビィと、愛聴ピアノトリオ盤を取り上げてきたが、一見何の脈絡もなさそうでいて実は一つの共通点がある。どれもみなベースがブンブン唸り、ドラムス(特にブラッシュ!)がビシバシ躍動感溢れるリズムを叩き出し、その音の洪水の中からスインギーでグルーヴィーなピアノが聞こえてくるという、剛力リズム・セクション盤ばかりである。逆にリズム隊が脆弱でピアノばかりが突出したようなピアノトリオはソロ・ピアノを聴いてるみたいで全然面白くない。ということで今日は、弾けるようなリズムで “連休の谷間疲れ” を吹き飛ばしてくれるような元気が出るピアノトリオでいきたい(^o^)丿
ハンプトン・ホーズと言えばドライヴの効いた快適なスイング感が身上のピアニストで、アップテンポの曲で聴かせる軽快でメリハリのあるフレーズは唯一無比の素晴らしさである。そんなホーズの代表作と言えば何故か世間では判で押したようにコンテンポラリー・レーベルの「トリオVol. 1」(1955年)ということになっているが、本当にみんながみんなそう思っているのだろうか?確かに良い盤には違いないが、他にもっと凄い演奏はいくらでもゴロゴロしているように思う。
ホーズの全盛期は1952年の「ピアノ・イースト・ピアノ・ウエスト」から58年の「フォー」あたりまでで、その直後に麻薬所持で5年の刑を打たれ、復帰した時にはあのインスピレーションが迸る様なプレイはすっかり影を潜めていた。まぁ麻薬が切れたらこんなモンなのかもしれないが、シャバへ復帰後の諸作は駄演凡演の連続で、ホーズは50年代で終わったと思っていた。
そんな彼がヨーロッパへの旅行中にドイツのSABA レーベルに世評も高い「ハンプス・ピアノ」を録音したのが1967年のこと。確かに新天地の空気を吸ってリフレッシュしたのかホーズもかなり好調なプレイを聴かせているが、収録曲の半分がベースとのデュオという眠たいフォーマットのせいでリズム派の私にはいまいちピンとこなかった。もちろん残り半分のピアノトリオではクラウス・ワイスのブラッシュがスルスル滑って気持ち良いことこの上ない「枯葉」のような名演もあるにはあったが、SABA/MPS 録音ということで音質が良すぎるせいか、アルバム全体を通して私がジャズに求めるガッツに乏しいように思えた。901さん流に言えばガツン!とこないのである。
で、その翌年に英ポリドール傘下のブラックライオン・レーベルから出たのが何を隠そう私がホーズの最高傑作と信じて疑わない「スパニッシュ・ステップス」。このアルバムの何がそんなに凄いのかと言うと、ドラムスのアート・テイラーとベースのジミー・ウッディという2人のリズム隊が獅子奮迅の活躍で、出がらし状態(笑)だったホーズを奮い立たせ、奇跡的な名演を生み出したこと。アルバム冒頭の①「ブルース・イナフ」からもうアクセル全開状態でスリリングなピアノトリオ・ジャズが展開されるのだが、アルバム中最高のトラックはやはり必殺の③「ブラック・フォレスト」だろう。テイラーのブラッシュとウッディのベースが生み出す原始的ともいえる凄まじいエネルギーが圧巻で、私に言わせればこれこそまさにピアノトリオの理想形なのだ。
このアート・テイラーと言う人は様々なセッションに引っ張りダコな割にはこれぞ!と言える名演がなかったように思う(←目立たないからこそフロントマンにとっては都合がよかったのかも...)のだが、この曲の後半部のドラムソロにおける狂喜乱舞の体はまさに “太鼓の乱れ打ち” という感じで、彼の一世一代の名演だ。尚、この曲は前作「ハンプス・ピアノ」の1曲目に「ハンプス・ブルース」というタイトルで収められているので、この2つのヴァージョンを聴き比べてもらえれば私の言わんとするところがわかってもらえると思う。
このアルバムのもう一つの目玉は絶世の名曲②「ソノーラ」が収録されていること。実は前作「ハンプス・ピアノ」にも同名のジャズ・ボッサが入っており、てっきり再演かと思っていたがいざ聴いてみると全く違う曲で、こちらは哀愁舞い散るジャズ・ワルツに仕上がっているのだ。クレジットを見るとどちらもハンプトン・ホーズ作となっている。何で自分の作った2つの違う曲に同じタイトルを付けたんやろ?その辺の事情はよくわからないが、どちらも名曲名演であることに変わりはない。特にこのワルツ版「ソノーラ」は他のピアニスト達もカヴァーしているキラー・チューンだ。
全盛期を過ぎてもう終わったと思われていたハンプトン・ホーズがヨーロッパの地で作り上げた起死回生の一発と言えるこのアルバム、大音量でかければ自宅が一瞬にしてジャズ喫茶に早変わりする必殺盤だ。
ブラック・フォレスト
ハンプトン・ホーズと言えばドライヴの効いた快適なスイング感が身上のピアニストで、アップテンポの曲で聴かせる軽快でメリハリのあるフレーズは唯一無比の素晴らしさである。そんなホーズの代表作と言えば何故か世間では判で押したようにコンテンポラリー・レーベルの「トリオVol. 1」(1955年)ということになっているが、本当にみんながみんなそう思っているのだろうか?確かに良い盤には違いないが、他にもっと凄い演奏はいくらでもゴロゴロしているように思う。
ホーズの全盛期は1952年の「ピアノ・イースト・ピアノ・ウエスト」から58年の「フォー」あたりまでで、その直後に麻薬所持で5年の刑を打たれ、復帰した時にはあのインスピレーションが迸る様なプレイはすっかり影を潜めていた。まぁ麻薬が切れたらこんなモンなのかもしれないが、シャバへ復帰後の諸作は駄演凡演の連続で、ホーズは50年代で終わったと思っていた。
そんな彼がヨーロッパへの旅行中にドイツのSABA レーベルに世評も高い「ハンプス・ピアノ」を録音したのが1967年のこと。確かに新天地の空気を吸ってリフレッシュしたのかホーズもかなり好調なプレイを聴かせているが、収録曲の半分がベースとのデュオという眠たいフォーマットのせいでリズム派の私にはいまいちピンとこなかった。もちろん残り半分のピアノトリオではクラウス・ワイスのブラッシュがスルスル滑って気持ち良いことこの上ない「枯葉」のような名演もあるにはあったが、SABA/MPS 録音ということで音質が良すぎるせいか、アルバム全体を通して私がジャズに求めるガッツに乏しいように思えた。901さん流に言えばガツン!とこないのである。
で、その翌年に英ポリドール傘下のブラックライオン・レーベルから出たのが何を隠そう私がホーズの最高傑作と信じて疑わない「スパニッシュ・ステップス」。このアルバムの何がそんなに凄いのかと言うと、ドラムスのアート・テイラーとベースのジミー・ウッディという2人のリズム隊が獅子奮迅の活躍で、出がらし状態(笑)だったホーズを奮い立たせ、奇跡的な名演を生み出したこと。アルバム冒頭の①「ブルース・イナフ」からもうアクセル全開状態でスリリングなピアノトリオ・ジャズが展開されるのだが、アルバム中最高のトラックはやはり必殺の③「ブラック・フォレスト」だろう。テイラーのブラッシュとウッディのベースが生み出す原始的ともいえる凄まじいエネルギーが圧巻で、私に言わせればこれこそまさにピアノトリオの理想形なのだ。
このアート・テイラーと言う人は様々なセッションに引っ張りダコな割にはこれぞ!と言える名演がなかったように思う(←目立たないからこそフロントマンにとっては都合がよかったのかも...)のだが、この曲の後半部のドラムソロにおける狂喜乱舞の体はまさに “太鼓の乱れ打ち” という感じで、彼の一世一代の名演だ。尚、この曲は前作「ハンプス・ピアノ」の1曲目に「ハンプス・ブルース」というタイトルで収められているので、この2つのヴァージョンを聴き比べてもらえれば私の言わんとするところがわかってもらえると思う。
このアルバムのもう一つの目玉は絶世の名曲②「ソノーラ」が収録されていること。実は前作「ハンプス・ピアノ」にも同名のジャズ・ボッサが入っており、てっきり再演かと思っていたがいざ聴いてみると全く違う曲で、こちらは哀愁舞い散るジャズ・ワルツに仕上がっているのだ。クレジットを見るとどちらもハンプトン・ホーズ作となっている。何で自分の作った2つの違う曲に同じタイトルを付けたんやろ?その辺の事情はよくわからないが、どちらも名曲名演であることに変わりはない。特にこのワルツ版「ソノーラ」は他のピアニスト達もカヴァーしているキラー・チューンだ。
全盛期を過ぎてもう終わったと思われていたハンプトン・ホーズがヨーロッパの地で作り上げた起死回生の一発と言えるこのアルバム、大音量でかければ自宅が一瞬にしてジャズ喫茶に早変わりする必殺盤だ。
ブラック・フォレスト
同じ意見に出会えてコメントさせていただきました。
ところで、アルバムの表紙が私のものと違うのですが何故でしょう?
「Spanish Steps」がお好きとのことで、同好の音楽ファンに出会えて嬉しいです。
アルバム・ジャケの事ですが、この盤は同じBlack Lion レーベルでも
UK盤(Polydor 2460 122)とUS盤(BL-122)でジャケットが違います。
あと、ドイツ盤(Intercord 28409-1 U)やオランダ盤(BLP-30111)とかもあって色々ややこしいですね。
因みに私のはUKポリドール盤です。
私のものは裏にBLP-30111とあるので、オランダ盤でしょうか。PA-7044と表にはあるんですが、これは日本でプレスした時の記号でしょうね。
ライオンマークも初めてみました。私のは人の似顔絵(多分プロデューサーのアラン・ベイツ)のトレードマークが入っています。
本当に色々有るんですね。
PA-7044でググッてみましたが、トリオの日本盤みたいですね↓
http://www.hifido.co.jp/KW/G5001/J/0-50/C01-10668-16722-60/
私は逆にライオンマークしか知らなかったので
アラン・ベイツの似顔絵は初めて見ました。
国による盤の違いって本当に面白いですね。