shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Cle / Clementine

2010-05-23 | World Music
 昨日クレモンティーヌの「ソリータ」を聴きながら記事をアップした後、無性に他の盤も聴きたくなって(←よくあることです...)手持ちの残り2枚も聴きまくり、彼女のウィスパー・ヴォイスにすっかり萌えてしまった(笑) まぁ自分で仕掛けたワナに自分でハマるようなモンで、このブログを始めてからこういう “ミイラ取りがミイラに” パターンがやたらと多いのだが、それはそれで結構楽しい。ということで今日もクレモンティーヌである。
 彼女のスタイルは(1)アンニュイなライト・ジャズ→(2)打ち込みをメインにしたクラブ系アーバン・ヒップホップ→(3)アコースティックな味わいのフレンチ・ボッサ、という流れの中で変遷してきているように思えるが、ヒップホップ嫌いの私にとって(2)は論外、彼女の軽やかな歌声にはやはり(1)か(3)がピッタリだ。(1)ではテナーのジョニー・グリフィンが参加したアンニュイな雰囲気横溢のジャズ・ヴォーカル・アルバム「コンティノン・ブルー」(1989年)を持っているが、惜しいことに選曲が私の趣味とはかけ離れており(←「ジャイアント・ステップス」とか「オール・ブルース」とか...)、曲中心に音楽を聴く私にとっては “BGM として軽く聴き流す1枚” でしかない。やはり自分の好きな曲をクレモンティーヌのメロウな囁きヴォーカルで聴かせてくれる盤がいい。ということで今日は2003年にリリースされたアルバム「クレ」でいこう。
 私がこのアルバムを買ったのは一にも二にも中島みゆきのフレンチ・カヴァー④「悪女」が入っていたからである。私は昔から中島みゆきが大好きで、洋楽的な下地をあまり感じさせずに他の誰にも真似の出来ない日本的なメロディーを書くその作風は日本の音楽界の中でもある意味異端というか孤高の存在だと思うのだが、そんな彼女の代表曲の一つをオシャレなヨーロピアン・ポップスを得意とするクレモンティーヌが取り上げているのだからこれはもう興味津津だ。実際に聴いてみると原曲は見事に換骨堕胎され、軽やかなボッサ・アレンジによって洗練されたカフェー・ミュージック(←もちろん良い意味です!)へと生まれ変わっている。イースト・ミーツ・ウエストというか、私はこういうカヴァーが大好きだ。それにしてもこのマッタリ感、たまらんなぁ... (≧▽≦) 
 ②「男と女(グランディス・ミックス)」は1994年のアルバム「イル・エ・エル」に収録された大胆不敵なクラブ系サウンド・ヴァージョンをリメイクしたもので、オルガンバー・サバービア・テイストの強かったオリジナル(←ハッキリ言って苦手です...)よりはかなり聴き易くなっているようには思うが、クレモンティーヌ版「男と女」なら何と言っても2008年の「スウィート・ランデヴー」収録の “スウィート・ジャズ・ヴァージョン” がベスト。彼女の持ち味であるウィスパー・ヴォイスの魅力が存分に発揮された名演だと思う。
 ⑪「コム・ダビチュード(マイ・ウェイ)」は長い間シナトラがオリジナルだと信じて生きてきた(恥)のだが、ロック以外のジャンルも聴くようになって “フランス人のカヴァーがやたらと多いなぁ...” と不思議に思い(笑)調べてみるとオリジナルはフランスのクロード・フランソワという人で、それにポール・アンカが英語の詞を付け、シナトラで世界的に大ヒットしたとのこと。なーるほど、あの品格溢れる曲想はシャンソンからきたものだったのか!と納得したものだ。この⑪もそこはかとなく漂う哀愁に涙ちょちょぎれるヴァージョンに仕上がっており、絶妙なタイミングで入ってくるフルートも雰囲気抜群で言うことナシだ。
 これらの有名曲カヴァー以外ではゴンチチとのコラボがエエ感じの③「シュール・ル・クイーン・マリー」や⑥「アン・アヴリル」、ブリリアントな午後にピッタリのライトなボッサ⑤「マリアナ」、サウダージ感覚溢れる⑦「6 P.M.」、クレモンティーヌの歌声とバックの多重コーラスが溶け合って不思議な浮遊感覚を生み出す⑧「過ぎ去った恋」なんかが気に入っている。
 クレモンティーヌは基本的にどれを聴いても似たようなボッサ・スタイルがベースになっているので、世評とかに関係なく自分の好きな曲の入っている盤から入門するのが一番だ。特に私のような中島みゆきファンにはぜひともこのフレンチ版「悪女」を聴いてクレ(笑)と言いたい。

Akujyo