shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Count Basie

2010-05-16 | Jazz
 カウント・ベイシーといえばデューク・エリントンと並ぶビッグ・バンド・ジャズの巨星として知られている。私がまだジャズのジャの字も知らなかった時でさえ、スティーヴィー・ワンダーの「サー・デューク」の歌詞に出てきたこともあって、この二人の名前だけは知っていたが、マイナーな音楽ジャンルであるビッグ・バンド・ジャズだから、たとえベイシー、エリントン級のビッグ・ネームであっても “名前は聞いたことあるけどその音楽は聴いたことない” という昔の私みたいな音楽ファンは結構多いんじゃないかと思う。
 前回クレア・マーティンの時に書いたように、私はヴォーカルもインストもスモール・コンボが好きで、手持ちのビッグ・バンド盤というのは数えるほどしかない。オーケストラの予定調和っぽいアンサンブルよりも各ソロイスト達の個性溢れるプレイを聴く方がずっと面白いからだ。そういうワケでジャズを聴き始めてからもしばらくの間は私とベイシーの接点はなかった。
 そんな私が初めて買ったベイシー盤が「ベイシーズ・ビートル・バッグ」、タイトルからも分かるようにビートルズ・ナンバーをベイシー流ビッグ・バンド・ジャズで料理してみましたという、丸ごと1枚ビートルズ・カヴァーのアルバムだった。ビッグ・バンドは苦手やけど大好きなビートルズの曲なら馴染めるかも、と思って買ってみたのだが、これがもう全然面白くないヘタレ盤で、大好きな「ヘルプ」も「ハード・デイズ・ナイト」も「オール・マイ・ラヴィング」も原曲の良さをことごとく殺すようなトホホなアレンジが施されており、ベイシーの魅力である “弾けるようなノリの良さ” が全く聞かれず、私はすぐに中古屋に売り払い “やっぱりビッグ・バンドは肌に合わんわ(>_<)” と諦めた。
 その後何年かが過ぎて私はテナー・サックスのレスター・ヤングにハマり、彼のレコードを求めて大阪中のレコ屋を廻っていた時に、 EAST の佐藤さんに “レスター聴かはるんやったらデッカのベイシーがいいですよ(^.^)” とこのブランズウィック盤「カウント・ベイシー」をススメられ、A面1曲目「ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド」を聴かせていただいた。私はレスターのリーダー作ばかりを追っており、初期のベイシー・オーケストラ在籍時代はノーマークだったが、この「ジャンピン...」の彼のソロはまさに天衣無縫というか、変幻自在というか、もう言葉で表現できないくらい素晴らしいものだったし、何よりもバンドが一体となって生み出す強烈無比なスイング感に完全KOされた。この1曲だけでも3,200円の価値があると思った私はその場で即買いを決めた。
 この盤をフル・ヴォリュームで聴きたいと思った私は速攻で家に帰り、ワクワクドキドキしながらターンテーブルに乗せた。1曲丸ごと “ノリの塊” のようなA-①「ジャンピン...」は大音響で聴くと更に魅力倍増、オール・アメリカン・リズム・セクションが生み出すステディーなリズムに乗って目も眩むような必殺のソロが続出する。アール・ウォーレンのホットなアルト・ソロから最小限の音数で最大限のスイングを生むベイシー・マジック炸裂のピアノ・ソロ、そして歌心溢れるバック・クレイトンのトランペットと続き、いよいよレスターが登場、意表を突いたソロの入り方がめちゃくちゃカッコイイ(≧▽≦) このように一騎当千のツワモノが集まったベイシー・バンドのドライヴ感溢れるサウンドは圧巻と言ってよく、漲るパワーに圧倒されて気持ちエエことこの上ない。
 ①以外も聴いてて思わず身体が揺れてしまうようなノリノリのナンバーが続く。まるで一筆書きのように流れるようなレスターのソロに頭がクラクラするカンザス・スイング・ナンバーA-②「エヴリ・タブ」、ズート・シムズが名盤「ダウン・ホーム」で取り上げたA-⑥「ドッギン・アラウンド」、ザクザク刻むフレディ・グリーンのリズム・ギターが快感をよぶB-①「テキサス・シャッフル」、ハーシャル・エヴァンスのウォームなテナーが心にグッとくるスロー・バラッドB-②「ブルー・アンド・センチメンタル」、心地良いスイング感がたまらない超愛聴曲B-③「チェロキー」、アドリブ・コーラスを先行させテーマのメロディーを曲の半ばまで出さずにじらすというビッグ・バンドとしてはユニークなアレンジが面白いB-④「トプシー」など、バンド・アンサンブルと各人の名人芸の両方が十分に堪能できる素晴らしい内容だ。
 単純明快なフレーズと躍動するリズムがめっちゃ気持ち良いこのアルバム、単体ではCD 化されていないが、デッカ時代のベイシー作品を集大成した3枚組CD「黄金時代のカウント・ベイシー ~The Original American Decca Recordings~」に完全収録されているので、初期のベイシーを聴くならそちらの方が手軽でいいかもしれない。