魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

南京虫だ

2011年12月24日 | 日記・エッセイ・コラム

スペイン巡礼の旅に出た友達が、南京虫で挫折した。
毎日20km歩くと意気込んでいたが、思わぬ伏兵で、体中腫れ上がり、ドクターストップで断念したそうだ。

南京虫と言えば、忘れられない光景がある。
昔、トロントで知り合った友人のアパートに泊めてもらった。
ベッドは一つしかないので、寝袋を床に敷いて寝た。
秋になったばかりの、暑くも寒くもない、穏やかな日だった。

夜中、顔中に電気が走ったような刺激を感じて目を覚ますと、顔中が猛烈に痛がゆい。目が覚めた瞬間、何かが顔を走り回っているような感じがしたので、
「おい、何かいるよ」と、言って、電気を付けると、
寝込んでいた友人は
「え~っ、そんなものはいないよ」と、うるさそうに、また寝ようとする。
「いや、絶対いるって!こんなにひどいもん」と、既に腫れ上がっている顔を見せるが、みる気などない。とにかく寝ようとする。

それでも、騒ぎまくって、嫌がる友人をベッドから降ろして、毛布を剥ぐと、赤っぽい、蜘蛛のようなものがサッといなくなった。
「何も、いないじゃない」と、
寝とぼけてベッドに戻ろうとする友人をとどめて、マットをあげた。

もう、何十年も経つが、あの光景は忘れられない。
マットの下の台の上で、ワッと、「蜘蛛の子を散らしたように」赤い虫が、八方に逃げ始めた。大きいのから小さいのまで、赤い絨毯だ。

「わーっ、こいつだ南京虫じゃないか?!
総毛立ちながら、騒ぐが、友人は
「だって、オレは噛まれてないよ」と、言いながら、マットを戻してまた寝てしまった。

結局、一週間ほど、赤鬼のような顔で過ごすことになった。
もちろん、その日はそのまま寝なかった。
その後も友人は、全く噛まれた様子がない。
おそらく、慣れてしまっていたか、噛まれても反応しない体質なのだろう。

あれが、南京虫というものだろうと思っている。名前はよく聞いていたが、日本では実際には見たことがなかった。
途上国ではいろいろな害虫がいるから、ホテルのベッドでも寝袋で寝た方が安全と思っていたが、床とは言え、まさかトロントでやられるとは思わなかった。それも、表に出ている顔だけ。

近頃は、交易、往来が激しくて、あらゆるものに外来種が入り込んでいる。温暖化で日本の気候帯も変わって、昔なら棲息できなかったものまで、当たり前のように生きているから、そろそろ、南京虫も流行するかも知れない。ご用心、ご用心


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