転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



昨夜は、紫苑ゆう『Legend of Shion―再会Part8』
@ホテルオークラ神戸に行った。

舅宅から帰って、荷物を置いたなりで婦人科クリニック受診、
とって返して洗濯をして干して、広島駅に駆け込んで、
・・・という綱渡り的な日程だった。
御陰で着ていくものもテキトー、バッグも靴もそこにあったもの。
新幹線に乗った途端に意識無く眠りこけ、
クリスマス・イルミネーションに彩られた港町神戸に降り立つと、
あまりに不似合いなオバさん姿である自分が、もの悲しかった。

新神戸からタクシーに乗ったら、運転手さんに、
「きょうはオークラで何があるんですか?
さっきから女性ばかり立て続けにオークラまでお送りしましたよ?
会議か何かですか?」
と尋ねられた(私のナリは会議出席程度のものかっ(--#))。
「元・宝塚のトップだった方と、そのファンだった私たちで、
毎年この時期に、同窓会的なお集まりがあるんですよ~(^^ゞ」
と、隠しても仕方ないから率直に説明してさしあげた。
「その方、有名な方なんですか?大変な人数ですね~~」
と運転手さんにはとても驚かれた。
いいえ、シメさんは『名も無きトップスター』(←紫苑ゆう本人談・爆)。

さて、去年の幕開けは、サヨナラ公演の『ラ・カンタータ!』だったが、
今回最初の曲は、彼女のお披露目だった『ワンナイト・ミラージュ』。
シメさんっ!綺麗、綺麗過ぎる!とやはり感動のオープニングだった。
シメさんは、現役のときから皆が認めるナルシストだったが、
今もやはり、こんな男役は自分にしかできないという熱い自負が、
彼女の強烈な自己愛とぴったり一致していて、それゆえに、
登場の瞬間からファンのボルテージを一気に上げる、
あの独特のオーラを発揮することができるのだと、
昨夜は、幾度も思ったことを、またしても、思った。

昨夜は更に衣装替えがあり、このほどシメさんが特注したという、
真っ白な軍服とスターブーツを着用した姿も披露された。
イメージとしては、『うたかたの恋』のラストシーン、
天国でマリーと踊るときの白い軍服に、少し飾りをプラスしたもの。
女性でこんな服がなんの不思議もなく着こなせる、
という紫苑ゆうは、やはり生まれついての男役なのだった(^_^;。

その一方、最近のMCのテーマはもう、臆面もなく『老化』。
その軍服姿でさて次は何をやると思うか、と客席に問いかけて
観客から『ジェラール』『ジェラール』と言われ、
「さ・す・が!」
と褒めたあと、しばらく無言になり、
「『炎のボレロ』!・・・今ね、タイトルが出て来なかったんです」
「前頭葉が、ダメになってるんですね~」
完全無欠の立ち姿で『老化による物忘れ』の話ができるなんて、
紫苑ゆう以外にそんな人材は考えられないと思った。

シメさんには少なくとも外見上、少しの緊張感もなかったし、
観客を苦しくさせるような気負いなど、微塵も見えなかった。
紫苑ゆうは、骨の髄まで「男役」であり、
ただ楽しく、明るく、華やかにそこに存在しているだけで、
男役トップとしての彼女の大きさが、自然に、
会場の隅々まで行き渡って、観客を幸せにしている感じだった。

昨日の圧巻は、『蒼いくちづけ』の『ノスフェラチュ』、
この登場シーンを演じられるのはやはりシメさんしか無いと思った。
ぱっとライトが当たった瞬間に、「ああ!男役!!!」という、
物凄いインパクトがあるかないかで成否が決まっている、
・・・シメさんは、そういう一瞬を絶対に逃さないどころか、
120パーセントの迫力で生かしきる主演者だった。
少なくとも、私のような観客は、舞台を観ながら、
「来るぞ、来るぞ、来るぞ!」と次の展開を待つ瞬間があり、
そこへ文字通り、キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!、
というワザで応えてくれる男役には、
もうその場で魂を捧げてしまうものなのだ。
この陶酔は、宝塚でなくては得られないと思う。

もうひとつ凄かったのは、『エリザベート』の『愛と死の輪舞』で、
この演目がシメさん現役時に回ってきていたら、
私は通い倒して死んでいたかもしれない、と昨夜は思った。
私は本来、宝塚の『エリザ』はあまり好きな作品ではないのだが、
シメ・トートが観られるならそれが180度変わりそうな感じだった。

抽選会やクイズで遊んで、最後は恒例の『ジャンプ・オリエント!』、
そして『愛の祈り』でシメさんが客席をまわって、
・・・ここまでは、例年通りのエンディング、と思われたのだが、
昨夜は、ついに、アンコールまでが用意されていた。
「本当に、宝塚って、この歌詞の通りだと思うんです」
「途中でやめなくて、本当に、良かった」
とシメさんが語って最後に歌った曲は『フォーエバー タカラヅカ』。
1番の歌詞を二度歌うから、ということで、
二度目は観客も一緒になっての合唱になった。

良い時代があって、自分もそのとき若くて、素晴らしい時を過ごし、
それを今、こうしてシメさんの歌で懐古できる幸福に昨夜は浸った。
『再会』は実に八回目、8年目の催しだった。
「十周年は、大劇場で、やろか?」
とシメさんがいたずらっぽく笑うと、
途端に、会場は拍手と悲鳴で、
このまま、どうかなってしまいそうなほどの盛り上がりだった。
「だから皆さん、好きよ」
とシメさんはまた笑っていた。

シメさんを観ていると、また宝塚が観たくなった。
シメさんが心から宝塚を愛して、愛して、
その思いゆえに観客もまた宝塚への愛情を確認できるのだと
昨夜は、改めて、思った。

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