転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



東京方面は猛暑のため、まだ早いのにアブラゼミが鳴き出した、
というニュースを先日、見ていて、いろいろ思い出したのだが。

私の、なんの役にも立たない特技のひとつに、
素手でアブラゼミが捕れる、というのがある。
いや、厳密に言えばこれは特技でもなんでもない。
だってアブラゼミは鈍いから、本当は誰でも簡単に捕れるのだ。
ただ、そういうことをやってみようと思う人が少ないだけで(^^ゞ。

幾度か話題にして来たことだが、私は物凄い田舎の出だ。
カエルにもヘビにもセミにもホタルにも不自由したことがなかった。
なんでカブトムシなどというものに都会のデパートで値段がつくのか、
私には子供の頃、不思議でならなかったものだ。
あれのツノが取れたらゴキブリだっつーに。

で、アブラゼミだが。
家の近所の神社には、セミが本当にたくさん居た。
セミの抜け殻など、道の途中にいつでも落ちていたし、
蝉が羽化するところも、私は幾度も見たことがある。

この神社に、夏休みの午後3時頃に行くと、
大概、アブラゼミがいっぱいいたものだった。
こいつらもアホではないので、子供らが大勢走り回っているときは、
用心して木の高いところにいるのだが、午後、ひとけがなくなると、
低いところに皆して降りて来て、木の汁を吸っているのだ。

そっとセミの背後から近づいて、いざ捕るときは素早い動作で、
手のひらでアブラゼミの下半身から順に、覆うようにして捕まえる。
ヤツらの目玉は上を向いているうえ、元来たいした反射神経はないので、
羽根の先に何かが(私の手だが)が触れても、すぐには飛び立てない。
次の瞬間には、私の手の中で、「ジジッ!」と悔しがっている、
という案配だ。

前に、あまりにも無数にいたので、左右の手で同時に取るという
「二刀流」(違)に挑戦したことがあったが、
私の反射神経もセミにケが生えた程度のものなので、両方とも失敗した。
「二蝉を追う者は一蝉をも得ず」を身をもって証明してしまった(^_^;)。

鳴くのはオスだが、鳴いていないときでも腹を見れば性別がわかる。
オスの腹には鳴くための袋みたいな出っ張りがあって、メスには無い。
若いセミは、オスもメスも、羽根がピンとしていて綺麗だが、
そろそろ地上での寿命を終える頃になると、羽根がボロボロになり、
腹や背に朱色のタカラダニをたくさんくっつけていたりする。

……という話をしたら、主人はそんなこと全然知らないと言った。
彼はまた、私の正反対で、都会でしか暮らしたことのない人なのだ。
「夜に田んぼのそばに行けば、ホタルだって素手で捕れるぞ?」
と私が自慢したら、主人は、
「いや別に俺は欲しくないけど」
と消極的に言ったものだった。

ちなみに、ツクツクボウシは低いところに来ないので、
あちこちで鳴いている割には、なかなか捕ることが出来なかった。
我々の間でさえ、ツクツクボウシは、アブラゼミとは一線を画した、
ワンランク上のセミだったのだ。
佐伯区の舅宅の近所の街路樹に、去年、ツクツクボウシがいて、
捕虫網があれば届きそうなところで鳴いていたので、
私はしばらく、それに見とれていた。

「ねえ、あれ、今なら捕れそうだよ!」
と私が興奮して言ったら、主人が、
「欲しいんか?捕って何にするんや」
とニベもなく言った。

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