転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



博多座昼の部観劇。
十一代目市川海老蔵・襲名披露公演

実は私はこのところ結構疲労がたまっていて
きょうは寝ていたい!と朝起きたとき思ったのだが、
今、海老蔵の出演する公演は、とにかくチケットが取れないし、
菊五郎松緑権十郎(坂東正之助)も出るとあっては、
これを逃す手はないだろうと、やはり思い直して出かけた。

行ってみたら雀右衛門が体調不良のため休演との札が出ていた。
雀右衛門も大好きな役者なので休演は残念ではあったけれども、
お歳を考えれば、体調が整わないときは無理は禁物だろうと思われた。
それでも雀右衛門は夜の部の口上だけは出るとのことで、
私の観る昼の部「六歌仙」のお梶は芝雀の代演とあった。

その昼の部、目玉は団十郎の新演出による『源氏物語』。
勿論、襲名披露の主役である海老蔵が光源氏だ。
春に歌舞伎座で『源太勘当』を見たときも感じたことなのだが、
海老蔵は観客の心を掴む魔性の役者だと思った。
まだまだ芸を極めたと言える境地には至っていないし、
台詞や所作にも、見る人が見ればきっと注文があるだろうに、
それを越えて、舞台の海老蔵が放つ魅力と言ったらどうだろう。
あれに捉えられたら最後、容易に逃れられるものではないと思う。
そこに菊之助(藤壺)・松緑(頭中将)が並ぶ豪華さと言ったら!

……は、良かったのだが。
私は例によって三階C席二列目から観ていたのだが、
きょうは、三列目から後ろ全部が、中学生の団体鑑賞だった。
名札を見たら、市立住○中学校三年二組、と書いてあった。
幕が上がる前に、『今、漫画読んだら、いかんか』と囁きあっていて、
嫌な予感はしたのだが、結果は案の定だった。いや、それ以上だった!
はっきり言おう、キミら、観劇態度、悪かったぞ。迷惑したぞ。

幕が開いても喋り続けるし、大向こうさんの真似をしながら大笑いするし、
全然じっとしていられず、ごそごそし続けて私の椅子の背を蹴りっぱなし、
『あれ男?』『女じゃろ』『男、男!』と無遠慮に会話するし、
挙げ句の果ては、源氏と藤壺の逢瀬を見て『男同士でチュウ』だと(--#)。

舞台の上のものに一片の価値も認めない・ギャグのネタにしかならない、
と感じているのだとしたら、それはキミらの勝手だ。
全然面白くもなんともない、全く見たくもないものを、
先生に言われて嫌々見ているキミらは、ひどく可哀想だとも思う。
大いに同情する。三時間も完全に無駄に過ごしたキミらは気の毒だった。
だが、少なくとも私にとっては、二度とない貴重な三時間だったのだよ?

ということで私は、光の君と今時のお子様方の間を行ったり来たりしつつ
『源氏物語』を鑑賞せざるを得なかった。
あれだけ邪魔されても光源氏たり得た海老蔵はやはり大した役者だった。
もし後ろのヤツらが居なかったら、私はこの舞台を観たことで、
場合によっては海老蔵に魂を捧げていたかもしれないが、
幸か不幸か、きょうは茶々入れられた御陰でそこまでは行かなかった。

さて、最後は、『六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)』。
私がきょう来たのは、海老蔵のためもあるが、それと同時に、
菊五郎が喜撰法師を踊るのを見たかったからでもある。
これは立役と女形の中間を行くような所作が見どころで、
兼ネル役者の音羽屋ならこその味わいがあると私は思っている。
それに賑やかな住吉踊りも楽しい
(↑○吉中学のキミたち、ちゃんと気づいてましたか?)。
菊五郎の相手は、先に書いたように雀右衛門の代役で芝雀
源氏では六条御息所もしていたので芝雀大活躍だ(^^ゞ。

どこまでも軽妙で、コミカルで、とてもテンポが良かった。
こういう後味の良い作品で襲名披露に華を添えるのも良いものだ。
うしろの中学生も音羽屋の芸に見とれたか
(いや、単に疲れて眠気が来ていたのだろうかな(^_^;))、
このときには私語が割合と少なくなっていたので、
私の方も前半よりはずっと快適に見せて貰うことが出来た。

私は見られなかったが、このあとの夜の部のメインは、
助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』。
お父上の団十郎の襲名披露のときには、
歌右衛門に続き、菊五郎が揚巻でお相手したものだったが
今回は菊之助が揚巻だ。
時の流れを感じるとともに、次代の魅力的な役者が多数揃って、
このうえない襲名披露となったことを嬉しく思った。

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