殿は今夜もご乱心

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みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

現場はいま…ゴーヤ騒動記・5

2024年06月04日 10時11分39秒 | シリーズ・現場はいま…

B社へサンプルを持ち込む際、ピカチューが夫に同行を求めたら

それはアキバ産業とB社の仕掛けた罠…

そう判断した私は、ピカチューの予定に気をつけるよう

そして我が家の3人のうち、誰が誘われても絶対に行かないよう

夫と息子たちに言った。

君子じゃなくても、危うきには近寄らないに限る。

 

我々はまんじりともせず、ピカチューが動くのを待った…

と言いたいところだが、彼は翌朝、早くも動いた。

「B社へ行く時、一緒に来てもらえん?」

夫にそう言ったのだ。

わかりやす!

 

サンプルを使って試験をする際、重機が必要になる…

B社は重機は貸すけど人員はそっちで用意するよう言っているので

こちらがオペレーターをやることになる…

自分には難しいので、一緒に来て重機を操作して欲しい…

それが夫を誘う理由だった。

 

お誘いを受けた時の夫の対応は

みりこん家恒例の家族会議で打ち合わせ済み。

「ワシは行かん」

まず、即座に断る。

何で?何で?…ピカチューは執拗に問い続けるだろう。

そこで言うのだ。

「常務に行けと言われたら、行く」

 

常務がB社の話を知ったら、絶対にピカチューを止める。

今のところ止められてないということは

毎日、報告義務のある予定表にも

サンプル持ち込みの件を入力してないということである。

だから常務は何も知らない。

第二アキバ計画を成功させるために秘密にしているのか

それともB社の仕事獲得を自分一人の手柄にしたくて

ギリギリまで黙っているつもりなのかは謎だが、どうでもいい。

 

ところでB社に関わったら、なぜ常務に止められるのか。

うちとB社との因縁を、彼は身をもって知っているからだ。

 

常務とB社長は建設協会の役員同士という関係で

昔から懇意だった。

若かったB社長を気にかけ、何かと世話をしたのも常務だ。

やがて、うちが本社と合併すると、常務は自らB社に営業をかけた。

我々は無理だと言ったが、常務は

「B社長がワシを粗末に扱うはずが無い」

そう言って自信満々に乗り込んだものである。

 

が、うちの名前を出した途端、B社長は烈火のごとく怒り出し

けんもほろろに追い返した。

あまりの剣幕に驚いた常務は、夫から事情を聞いて納得。

可愛がってきたB社長が自分に牙をむいた不快もあり

以後、B社は存在しないものとして

完全無視の方針を取ってきたのだった。

 

 

さて、夫は打ち合わせ通りピカチューの誘いを断り続けた。

依然として誘うからには、B社のことを常務にまだ言ってない…

我々はそれを確認しながら日を送った。

 

そのうち、B社にサンプルを持ち込む前日が訪れた。

第二アキバ計画には、夫の参加が不可欠。

夫がのこのこB社へ行った既成事実が無ければ

彼がK商事の仕事を奪おうとした筋書きは成立しない。

アキバ社長にハッパをかけられたし、B社長も待っているし

ピカチューは何としても夫を連れて行かなければならないのだ。

 

その日もしつこく誘うピカチューに、夫は言った。

「シゲを連れて行け」

これ、我が家基準では賞賛に値する機転である。

夫にはシゲちゃんという手があったのだ。

3年前、夫の重機アシスタントとして雇ったものの

アシストするのは夫の方で、未だ一人前には遠いシゲちゃん。

彼にはこういう時こそ、役に立ってもらおうではないか。

 

そして当日、ピカチューは渋りながらも

シゲちゃんを連れてB社へ行った。

夫が行かないのだから、仕方がないではないか。

これでK商事の仕事を奪おうとしたのは

夫でなくピカチューということになるのだが

彼はそこまで気づけるタマではない。

 

知らない会社へ連れて行かれることになったシゲちゃんは

緊張していたが、いつになく頑張ったようで

つつがなく任務を終えた。

そしてB社はその日のうちに

「サンプルを使ってみたが合わなかった」

ということで、ピカチューに断ってきた。

B社長とアキバ社長は、さぞ失望したことだろう。

 

話は飛ぶようだが、その数日後

次男はアイジンガー・ゼットから相談を持ちかけられた。

「私、常務さんから疑われてるみたいなの。

私が板野さん(ピカチュー)を裏で操ってるって」

「何で」

「板野さんが常務さんに怒られて、そう言われたんだって」

「ほ〜ん…」

「常務さんに、違うって言ってくれないかな」

「ホンマのことじゃないん」

「私が?私はあの人たちとは無関係よ!」

「わしゃ知らん」

“あの人たちとは無関係”という発言で

すでにグルだと自白しているようなものだが

本人はお気づきでないご様子。

 

常務に怒られたピカチューは

アイジンガー・ゼットにそのままを伝えたのだ。

核心を突かれ、相当うろたえたと思われる。

恋愛経験の少ない爺さんは、罪深いものだ。

相手を危険にさらさないという大前提を知らないもんで

自分が危なくなると簡単に女を売る。

 

ともあれ、この“相談”でわかるのは

ピカチューがB社の件をとうとう常務に話したということ。

その内容は仕事のことではなく

夫の非協力的態度についての告げ口だったのは想像に容易い。

夫を連れて行かなかった不守備をアキバ社長とB社長に責められ

怒りのぶつけどころが無かったのだろう。

 

ピカチューは、夫の職務怠慢を告発するにあたり

B社にサンプルを持ち込むことになった経緯を

説明する必要が出てくる。

飛び込み営業で話をつけたと言っても

あのピカチューでは信じてはもらえないだろうから

アキバ産業の紹介だと正直に言うしかあるまい。

商売仇から怨恨の相手へのあり得ない紹介ルートを聞いた常務は

ピカチューが二社から踊らされていることを察知したのだ。

その流れで、中継役のアイジンガー・ゼットが浮上したと思われる。

 

とはいえ、常務が何らかの対処をするとは期待してない。

上に立つ者は難しいのだ。

ピカチューを配属させたのも、アイジンガー・ゼットの正社員登用も

最終的には常務の決済。

それをいちいち処分していたら、常務自身が人選能力を問われる。

ピカチューを所長代理に降格させたばかりだし

これ以上を望むのは贅沢というもの。

ただ、知ってくれているだけで満足だ。

この状況を楽しむ方が、我々にはお似合いである。

《続く》


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2 コメント

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Unknown (ちぃやん)
2024-06-04 19:06:29
残念だな〜
当初F工業社長さんとの面談がなくなったと知っての率直な感想でした。
しかしみりこんさんが当シリーズ初めにこのことに触れられたのは?と回を重ねられる毎に関心を深めていたら、何ということでしょう!
かえって“素晴らしい”展開が繰り広げられているとは!

ここからどう締め括られるのか、楽しみです♪
返信する
Unknown (みりこん〜ちぃやんさんへ)
2024-06-04 20:33:33
書いているうちに、どんどん妙な展開になってきました。
複雑なことが一気に起きたので、わかりやすく
説明しようと思うのですが、話がまとまらなくて
困りました。
でも面白かったです。

F工業訪問、次に出てきます。
ショボい内容なので脱力されると思いますが
我慢してくださいね。
楽しみにしてくださって、ありがとうございます。
返信する

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