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昨年、両政府後援のもと平壌とソウルで画期的な写真展も開催されました。

2016-10-20 | 朝鮮はもともと一つの...

ロジャー・シェパード写真展「JUST KOREA

朝鮮半島の山々は連なる」を観て/朴敦史

「非ー分断」への呼び声

会場のようす

会場のようす

朝鮮半島に連なる「白頭大幹」(ペットゥデガン)。白頭山に始まり、金剛山、太白山を経て智異山へ至る約1700kmもの山脈は「虎の背骨」にも喩えられ、民族的神話や民衆信仰の源泉ともなっています。「分断」以後、朝鮮人が白頭大幹を自由に探訪できなくなるなか、ニュージーランド出身の写真家・探検家ロジャー・シェパード氏は2007年から2012年にかけ、初めて白頭大幹を縦走。山々の景観、豊かな自然、その途上で出会った人々を撮影しました。

朝鮮の山々を「北か南か」ではなく、一つの「KOREA」として捉えた彼の作品は南北両国において大きな反響を呼び、昨年、両政府後援のもと平壌とソウルで画期的な写真展も開催されました。そんなシェパード氏の作品を日本で初めて紹介する写真展「JUST KOREA ―朝鮮半島の山々は連なる」が京都市の「東本願寺しんらん交流館」で開催中です。9月下旬、大谷大学での第一期展示(9月20日〜30日)を訪れました。

自然へ柔らかな視線

「JUST KOREA」展は、韓国で制作されたシェパード氏のドキュメンタリー番組を観た大谷大学教員の鄭祐宗氏が、彼に連絡したことがきっかけとなり実現。日本開催のために選ばれた20数点の作品がニュープリントで展示されています。

紺碧の「天池」がまぶしい白頭山、瀑布のかすむ頭流山、四季ごとの名を持つ金剛山、祈りの場でもある太白山、そして智異山など。シェパード氏の作品は、遥か先まで深くピントを合わせた雄大な奥行きを持ち、白頭大幹の厳粛さと深淵さを余すところなく表現しています。また、四季の変化、昼夜それぞれの表情もが写し込まれ、自然へ柔らかな視線を注ぐ「撮影者」の存在に親近感が湧いてきます。

今回の写真展のコンセプトを鄭祐宗氏はこう説明します。

「白頭山はKOREAの山です。智異山はKOREAの山です。それぞれKOREAの山です。ただそれだけです。」(ギャラリートークより)

会場にはいわゆる「国」を象徴するシンボルや境界線が一切見当たりません。同展は白頭大幹を「北」や「南」の山々としてではなく、本来の姿通り境界線のない「KOREA」の山々として示すことで、来場者に「境界」や「分断」について再考させる試みでもあるのです。

鄭祐宗氏によると、「どこからが韓国で、どこからが北朝鮮ですか?」と境界線の所在を問われることが多いそうです。私も思わず、「このあたりだろうか」と見当をつけようとしていました。「分断」を所与の事実として受け入れ、「分断」を固定させてもいる自分自身の慣習的な身体感や歴史観が露わになった瞬間でした。

ロジャー・シェパード写真展のタイトル

ロジャー・シェパード写真展のタイトル

「ウリナラ」への想い

同展には在日同胞の来場者も多く、私が訪れた際にもウリハッキョ出身とおぼしき同胞の方々が鑑賞され、白頭山などに行った思い出を話されていました。白頭大幹を前に「ウリナラ」への想いや記憶が多く語られることは、平壌・ソウルでの写真展とは異なる、同展に特徴的な光景ではないでしょうか。

また、資料として朝鮮の古い地名の載った図録などが展示されていますが、何人もの同胞が自身の故郷の名を探し求め、列をなしていたそうです。「邑」など、聞き覚えた故郷の名が古く、現在は地名が変わって探せなくなっていることも多いためです。「分断」/「離散」を強いられ、生きさせられているともいえる在日朝鮮人。いわば朝鮮人の「変数」の存在が、シェパード氏の鮮やかで深く澄んだ山々の写真に微妙な陰影を与えているように思えます。

『朝鮮』の統一を支援

シェパード氏は白頭大幹を縦走しながら、やがて「分断」の悲哀を分かち持つようになったといいます。

「『朝鮮人』が自らの祖国では南北の境界線を超えてその山々を歩いたり、写真を撮ったりすることができず、外国人だけがそれを許されるのは不幸だ…いつかすべての『朝鮮人』が平和で統一された朝鮮半島を自由に移動し、私がなしたことと同じことができるように…『朝鮮』の統一を支援するのが私の役割だと考えました」(会場パンフレットのエッセイより)

朝鮮人の歩みそのものと心情を重ね、このように稀有な変遷をたどった彼の存在に、私は連帯感と一種の清涼感を覚えました。そして、彼の作品は記念碑的な記録写真であるばかりでなく、「KOREA」の「分断」を固定化しようとする強い磁力に対する、「非-分断」への呼び声に他ならないと思われました。その意味で、私たちが「統一」へ向かうために、まず「非-分断」を生き直すことができるのかが、あらためて問われているのではないでしょうか。

※「JUST KOREA」展は10月31日(月)まで「東本願寺しんらん交流館」で開催(入場無料)。20日(木)17時半より鄭祐宗氏によるギャラリートークが予定されています。シェパード氏の様々な写真は、彼のサイト「One Korea Photography」でも見ることができます。「KOREA」の人々、民俗、宗教、日々の暮らしが捉えられていて、興味が尽きません。

(コマプレス、『60万回のトライ』共同監督)



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