〈大阪無償化裁判〉朝鮮学園が全面勝訴/歓喜の叫び、差別是正への新たな出発点に
大阪朝鮮学園が原告となり日本国に対して高校無償化制度の施行規則に基づいた指定の義務付けを求めた裁判の判決が28日、大阪地裁202号法廷で言い渡された。地裁は学園側の請求を全面的に認め、国の処分を取り消し、無償化の対象とするよう命じた。
判決が出た瞬間、傍聴席は歓喜に包まれた。地裁の外でも朝鮮学校の関係者や支持者たちは一様に抱き合い、涙を流し、大歓声を上げていた。
「裁判所は良心と法の支配のもとで適正な事実認定、判断を下した。我々の全面勝訴だ」。大阪無償化裁判弁護団の丹羽雅雄団長も喜びをひしひしと噛み締めていた。
判決では、下村博文文科大臣が教育の機会均等とは無関係な外交的、政治的意見に基づき朝鮮学校を無償化法の対象から排除したのは、裁量権の逸脱、乱用であるとして違法、無効であると指摘された。また被告(国)が、朝鮮学校が朝鮮、総聯と一定の関係を有する旨の報道などを理由にして、総聯の「不当な支配」を受けているとの疑いが生じるとした主張に関しては、報道などの存在及びこれに沿う事実をもって、特段の事情があるということはできないとした。
判決後に開かれた記者会見では大阪朝鮮学園の玄英昭理事長が大阪朝鮮学園声明文を読み上げ、「朝鮮学校に対する公的助成からの排除の流れを断つ礎となり、始発点、転換点となるだろう」「朝鮮学校で学んでいる多くの子どもたちの教育への権利が改めて認められ、保証されたことをうれしく思い、我々の民族教育は正当であり、民族教育は法的保護に値する権利であることが証明された」と意義を強調した。
「日本社会に正義は生きていた。私たちの子どもが日本学校の子どもたちと同じように学ぶ権利が認められて嬉しい」。大阪府内の朝鮮学校に子どもを送るオモニは涙を流しつつも、記者会見場で切実に問いかけた。
「子どもたちはあらゆる差別、虐待、搾取から守られるべきであるにもかかわらず、朝鮮学校の子どもたちは国際情勢や政局によって危険にさらされ、深い傷を負っている。問題や課題を解決していくのは子どもではなく大人の責務だ。国が控訴しないことを心から切望する。同じ子どもを持つ親として、偏見や差別、憎しみのない平等で平和な社会をともに目指していきませんか」
「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」の長崎由美子事務局長は、涙で目を赤らめながら胸を撫で下ろしていた。
脳裏にフラッシュバックしたのは、2012年4月17日から府庁前で毎週行ってきた「火曜日行動」の日々。「雨の日も風の日も、どんな時も立ち上がり声をあげてきた朝鮮学校の関係者や支持者たち。勝利判決は皆が待ち望んだ結果だった」。
長崎事務局長は、朝鮮学校を取り巻いて多くの人々が「手をつなぎ合い、人間が誇りを持って生きていくために繰り広げてきた闘い」は、差別排外主義や利己主義ですさんだ日本社会を根底から変えていく「原点」になったと誇らし気だ。
2015年度に大阪朝高を卒業した金宏城さん(朝大政治経済学部2年)は強く願っている。
「日本政府は今回の判決を真摯に受け止め、民族教育に対する差別を取りやめてほしい。今日という日が、朝鮮学校に通う全ての生徒たちが安心して学べる社会を築いていくうえでの始発点になってほしい」。
この日は全国各地から数多くの同胞や日本市民たちが応援に駆けつけていた。
京都中高オモニ会の朴錦淑会長(45)は19日に広島無償化裁判で下された「あまりにも酷い不当判決」に憤慨しながらも、大阪無償化裁判での勝利を心から祈っていたという。
自身の子どもは在特会による京都の朝鮮学校襲撃事件に遭った。無償化問題をおいても多くの生徒、卒業生たちが心に傷を負ってきたはずだと話す。
今回の判決を受けて「傷ついた子どもたちを癒してあげられるように、今後も大人たちが力を合わせていきたい」と気持ちを新たにしていた。
「嬉しさのあまり涙が止まらない」と話す東京中高オモニ会の金栄愛会長(51)は喜びもつかの間、すぐさま東京への帰途に就いた。向かった先は、朝鮮学校への無償化適用を求め、毎週文科省前で行われている「金曜行動」。
「足取りは軽い。胸を張って参加者たちに勝利の報告を届けたい。次は東京が裁判の判決(9月13日)で勝利する番だ」
(李永徳)