<開城工団中断波紋>韓国内の安保危機時に浮上する極端な主張
2016年02月15日14時17分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
北朝鮮の核・ミサイル挑発、政府の開城(ケソン)工業団地全面中断措置で韓半島(朝鮮半島)が一寸先も予測できない状況になっている。時を合わせて韓国社会内では理念の両極端を代表する主張が噴出している。
代表的なのが「独自核武装論」と「総選挙用北風(北朝鮮の脅威による影響、またはそれを利用した行為)企画説」だ。しかしこうした極端な主張は理性的な討論を妨げ、国論分裂を深めるという懸念が強まっている。
実際、中央日報の世論調査(12-14日)の結果、核武装に賛成するという意見は67.7%(強く賛成3.8%、賛成34.9%) と、反対の30.5%(強く反対9.6%、反対20.9%)を圧倒した。西江大の金英秀(キム・ヨンス)教授(政治外交学科)は「核武装論が力を得るのは 現実的な副作用を考慮しない近視眼的ポピュリズム」とし「可能でもなく効果的でもない主張が対北強硬論に便乗しているという証拠」と指摘した。李源宗 (イ・ウォンジョン)元青瓦台(チョンワデ、大統領府)政務首席秘書官は「北風企画説は過去とは違う社会の雰囲気についていけず、総選挙だけを意識した歪 んだ発想」と批判した。
◆「韓半島非核化」揺さぶる核武装論=与党セヌリ党の元裕哲(ウォン・ユチョル)院内代表は北朝鮮の4回目の核実験(1月6日)の翌 日に開かれた党最高委員会議で「自衛権レベルで平和用の核を持つ時代になった」と主張した。鄭夢準(チョン・モンジュン)元セヌリ党議員も14日、ブログ に「国家非常状況を根拠に核拡散防止条約(NPT)から暫定脱退することを検討する必要がある」というコメントを載せた。鄭元議員は「韓半島に戦術核兵器 を再配備するべき」と何度か主張してきた。2人は北朝鮮の核実験で1992年の韓半島非核化共同宣言が死文化したと主張する。
しかしこうした主張は後の影響を無視した国家主義的な見解という批判が少なくない。金英秀教授は「韓半島の非核化を堅持しながら我々 は国際社会の信頼を得た」とし「核武装をするというのは、米国の反対や国際社会からの孤立など莫大な不利益を無視した発想」と述べた。日本に軍備強化の口 実を与えるという指摘もある。韓国外大のイ・チャンヒ名誉教授は「我々が核武装論を主張すれば、戦争放棄を規定した日本平和憲法9条を改正しようという日 本国内の極右派の主張に弾みがつくことになり、北東アジア軍備競争につながって域内の軍事的緊張が高まるだろう」と述べた。
◆選挙だけを意識した「北風企画説」=野党「共に民主党」の李鍾杰(イ・ジョンゴル)院 内代表は11日の党政策調整会議で政府の開城(ケソン)工業団地中断決定を批判し、「選挙を控えて北風戦略を使うのではという疑いまで生じる」と述べた。 同じ党の陳聲準(チン・ソンジュン)議員は10日、フェイスブックに「北が撃ったのは(ミサイルでなく)人工衛星」と主張した。
こうした主張に対し、野党からも批判が出ている。匿名を求めた民主党の重鎮議員は「対北制裁がすべてではないように、無条件な包容も答えにならない」とし「陰謀説を提起するのは消耗的な論争」と話した。
「北風は与党に有利だ」という公式も過去の話だ。2010年6月の地方選挙を3カ月後に控えて韓国哨戒艦「天安」爆沈が発生した時、 保守層に有利だという予想が多かった。しかし実際に苦戦したのは与党だった。東国大の高有煥(コ・ユファン)教授(北朝鮮学科)は「政府の開城工業団地中 断決定は『安保優先主義』がより大きく作用したものだ」とし「総選挙用北風主張は安保を政略的にのみ判断している」と述べた。
韓国政治学会長のソウル大のカン・ウォンテク(政治外交学部)教授は「現在、韓半島は非常に厳しい状況であるだけに、短期的には安保 不安感の解消に、長期的には南北関係解決法と外交力強化戦略の用意に力を注がなければいけない」とし「葛藤を通じて得られる目の前の利益より、国家の未来 を考慮した長期利益を追求しなければいけない」と強調した。