対シリア・米ロ合意
化学兵器廃棄へ「枠組み」
【パリ=浅田信幸】ケリー米国務長官とラブロフ・ロシア外相が14日にジュネーブで合意に達した内容は、シリアの化学兵器の全面的廃棄に至る手順 と期限を明確にした「枠組み」についてです。両者はシリアに化学兵器が約1000トン存在するとの評価で一致。化学兵器の種類と量、保管・製造・研究開発 施設の場所にかんする包括的なリストを1週間以内に提出するようシリアに求めました。
包括的なリストを1週間内提出要求
両者の合意は、化学兵器の廃棄と検証について、▽11月までに化学兵器禁止機関(OPCW)による初回の現場査察を終え、生産施設を解体、▽2014年半ばまでに化学兵器物質と施設を完全廃絶するとしています。
これらの作業は、OPCWと国連が行うとし、数日以内にも手順と期限を明記した決議案をOPCW執行理事会に提出。その後、速やかに国連安保理決議も採択します。OPCWと国連の作業には安保理の5常任理事国の参加を予定します。
合意はまた、シリアによるOPCW決定の履行状況を「定期的に検証」する規定を安保理決議に盛り込むべきだとし、従わない場合には、強制措置に関する国連憲章第7章に基づく措置をとるべきだと指摘しました。
この点について、共同記者会見でラブロフ外相は「合意には、武力行使については何もないし、自動的制裁もない」と発言。ケリー長官は「選択の幅を狭めるものは何もない」と反論する一幕もありました。
両者は、今回の合意が化学兵器問題にとどまらずシリア内戦の終結に向けた一歩となることへの期待を表明。ラブロフ氏はシリア国際会議が10月にも 実現するとの見方を示しました。ケリー氏も内戦を終結させるための「さらなる協力の基礎を据えることができた」と評価する一方、「枠組みの実践には国際社 会の警戒と関与が必要だ」とくぎを刺しました。
廃棄の実践、国連が支援
事務総長
【ワシントン=島田峰隆】潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の報道官は14日、シリアの化学兵器廃棄をめぐる米ロ合意を歓迎する事務総長の声明 を発表しました。声明は「合意がシリアで将来化学兵器が使われることを防ぎ、シリア国民の苦しみを止める政治的解決への道を切り開くことを強く希望する」 と強調しています。
またシリアの化学兵器の廃棄と撤去の枠組みについてさらに確認したいとし、「それを実践するうえで国連の支援を約束する」と述べました。