強制労働「被害は甚大」
シベリア抑留訴訟 政治解決を示唆
京都地裁
(写真)報告集会で訴える林原告団長(右)、村井弁護団長(中央)=28日、京都市中京区 |
第2次世界大戦後、シベリアなどに抑留され強制労働させられたのは、日本政府の「棄兵・棄民政策」によるものだとして、抑留被害者や遺族ら66人が国家賠償を求めた訴訟の判決が28日、京都地裁(吉川愼一裁判長)でありました。
判決は、日本政府が旧ソ連に日本兵の労力提供を申し出るなどした一連の「遺棄行為」や早期帰国の措置を取らなかった問題について、原告の主張をすべて棄却しました。
その一方で判決は、極寒での過酷な強制労働の被害を「深刻かつ甚大なもの」と認め、抑留者への補償を定めた立法措置がなく「その労苦に報いるとこ ろがなかった」と指摘。そのうえで抑留問題の解決は立法の問題にとどまり、「政治的決断に待つべきものである」と強調しています。弁護団によると、同様の 訴訟で補償措置がないことを指摘し、政治解決を示唆した判決は初めて。
判決後の報告集会で、村井豊明弁護団長は「裁判中に5人の原告が亡くなり一刻も猶予できない。不当な判決で控訴するが、司法判断だけでなく政治決断も迫っていきたい」と話しました。
原告で「棄兵棄民政策による国家賠償を勝ち取る会」代表の林明治さん(84)は、「不当な判決だが、まだ階段の一歩だ。今後のたたかいにいっそうの力をかしてほしい」と訴えました。
原告の平均年齢は85歳で、弁護団によると判決前日の27日にも一人の原告男性(86)が亡くなっています。