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入管法改定・在日の方の意見は?

2009-07-03 | 投稿・投書・私の意見
道半ばの入管法改定 外国籍住民の声
                              2009-07-01
          歓迎と反発 こもごも

 外国人登録制度に代わる新たな在留管理制度と、自治体の住民基本台帳に外国籍住民も載せるという住民基本台帳法改定案が衆議院で成立し、参議院に送られた。改定案では在日韓国・朝鮮人など44万人を数える特別永住者について「特別永住者証明書」の常時携帯義務と罰則規定を削除、再入国許可も緩和するなど、利便性が向上した一面がある。ただし、特別永住者と同様、長年同様な生活を送ってきた一般永住者については常時携帯義務を残し、解決を将来の「検討課題」と先延ばししたため、在日韓国人らから「道半ばの改定」といった反発も出ている。

 李康成さん(53、民団静岡浜松支部事務部長) 特別永住者証明書の常時携帯義務と罰則規定が削除され安心した。私は「特別永住者」だが妻は「永住者」。現在でも日本入国時の空港で手続きが異なるのに、今後は異なる身分証明書を持つことになり、市民生活が在留資格の違いにより現状よりも不便性、差別性が生じないか心配だ。

 尹徹秀さん(東京、弁護士) 新しい在留管理制度は外国籍の住民に対して徹底した管理強化を図るものであり、プライバシーの保護等の点から問題が多い。外国籍の者は、上陸許可、在留期間の更新等の申請の際に、法務省に各種事項を記録され、在留カードを強制的に持たされる。この在留カードには、例えば、就労資格の有無について、就労資格がないのなら、就労不可と明確に記載されることになる。

 一方、再入国許可の緩和や、在留期間の上限の伸長、外国籍の住民の生活の利便性が向上した点もある。特に、特別永住者に限ってであるが、特別永住者証明書(現在の外国人登録証明書に該当するもの)の常時携帯義務がなくなったことは画期的である。

 高敬一さん(36、社団法人大阪国際理解教育研究センター事務局長) 特別永住者にたいする取り扱いが随分〝優しく〟なった。昔に比べて日本は在日コリアンにだけは〝優しく〟なったのだろうか。いや、違う。変わったのは在日の側だ。多くの在日がすでに日本社会に同化してしまっていることを官僚たちはよくわかっているのだ。だからへたに厳しくして、〝眠れる獅子〟を起こす必要はないというわけだ。

 しかし、そうはいかない。よし、それなら「証明書」の受け取りも切り替えも拒否してやろう。まずはそんなところからやってみたい。

 鄭炳采さん(58、民団大阪本部事務局長) 特別永住者について常時携帯がなくなったことは大きなプラス。民団が要望書を提出するなど、積極的に運動を行ってきたことの結果のあらわれだ。

 だが、一般永住者はまだ適用外。また在日外国人全体の枠で考えると、まだまだ活動していかなければならないことが多い。今回の法改正は、私たちの要望の一部が通ったにすぎない。

日本の未来閉ざさぬか

 高京順さん(69、大阪市・主婦) 常時携帯義務がなくなったことは、孫やひ孫のためにもとても喜ばしい。まだまだ解決すべき問題は残されているが、一歩進んだとは思う。

 アンジェロ・イシさん(武蔵大学准教授) 「在留カード」から「外国人」という言葉が消えたのは素直に嬉しいが、管理・監視の対象として扱われているという点は依然として変わらず、気になる。とりわけ私のように「日系人」で、しかも永住権を取った者になぜ、携帯義務や空港での指紋採取が課せられるのか。特別永住者だけが免除されるのは不思議だ。

 宋貞智さん(民族差別と闘う大阪連絡協議会代表) 衆議院で可決した出入国管理及び難民認定法の改正法案は「改正」とは名ばかりで、外国人住民に対する「管理」を強化し、「人権侵害」を繰り返すものである。

 戦後64年が経ち、在日コリアンは6世が生まれようとしているなかで、依然として外国人を犯罪予備軍として扱う日本国政府の排外主義政策に強い憤りを感じる。

 重度さん(川崎市ふれあい館館長) 外国人の受け入れなくして日本の経済・産業が成り立たないという現実と将来展望が多くの識者から言われているのにもかかわらず、その処遇を安定させるという発想ではなく、あまりにも管理優先の合理化に多くの懸念を覚える。国家行政のいう「多文化共生」は絵空ごとにしか聞こえない。国益最優先の外国人利用主義はもういい加減にしてほしい。

 朴実さん(65、東九条マダン実行委員長) なぜ、特別永住者だけ常時携帯義務が免除され、その他の外国人は常時携帯しなければいけないのでしょうか。ここには合理的な理由が見あたりません。特に、一般永住者は数10年以上日本で生活しておられる地域住民の一員です。彼らに常時携帯義務を負わすことは許されません。

残った課題 解決急ごう

 郭辰雄さん(42、大阪・コリアNGOセンター運営委員長) 外国人の管理システムを政府が一元的により徹底しておこなうことを目的とするもの。特別永住者の常時携帯義務は免除とあるが、外国人が「敵視」される社会で、特別永住者だけが例外というのは本質的にありえない。今回の改定は外国人との「共生」とはほど遠く、むしろ逆行するものだ

 鄭暎惠さん(東京、大妻女子大学人間関係学部教授、社会学専攻) 日本のエリートたちは人を信じて共に生きることを知らないのだろうか。グローバル化と少子高齢化を前に外国人への差別意識は自らの首をしめるだけなのに。他人事だと関心を寄せない庶民も問題だ。自他の人権について敏感になるべきだろう。DVが原因でも3カ月以上配偶者の身分を有する活動を離れると、在留資格を取消すなどは愚の骨頂でしかない。

 朴善貴さん(31、青年会中央本部副会長) 特別永住者証明書の常時携帯義務の撤廃や再入国制度の大幅な緩和は、在日韓国人を管理の対象とするこれまでの立場を大きく変えるものであり、平穏に日本で生活する当たり前の権利を具現化したもの。しかし、一般永住者を含む外国籍住民に対する管理体制が、これまで在日韓国人が受けてきたものよりも強化されうる危険性がある。

 オールドカマーでありリーディングマイノリティーを自認する在日韓国人社会はこれを看過してはいけない。

 金哲弘さん(33、青年会大阪本部会長) 特別永住者に限れば一歩前進といえるだろう。だが、在日外国人全般の立場でいうと、今回の改正は必ずしも手放しで喜べることではない。常時携帯制度の撤廃は私たちの要望事項のほんの一部であり、民団は引き続き残された諸問題の解決を訴え続けていかなければならない。

常時携帯 一般永住者はなぜ
住基法改定 利便性に評価も

 朴容福さん(56、東京・自営業) 外登法が消える。60年余に及んだ過酷な法制度が音もなく消える。ある人は特別永住者は入管に行かずに済み、常時携帯義務が廃止されるから不満はあっても一定の評価をすると言っていたが、違うだろう。

 問題はこれから先、ひょっとしたら何十年も顔写真付き、提示義務、7年ごとの切り替え登録、申請、受領義務などのすべてに1年以下の懲役、もしくは刑事罰のついた制度のなかで、なお私たちの子どもたちが生きていかなければならないということを、いまある私たちがどう考え、どういう態度を示すかということだろう。

 在日の未来に対する、いまある私たちの「歴史的な責任」が問われている。付帯決議には「永住者の歴史的背景……」とあるが、そもそも「歴史的背景」をもつ「特別」な「永住者」であるとはどういうことなのか、わたくしたち自身がもう一度よく考えてみなければならない。在日の「永住」を資格から権利に変えていく歴史的な闘いが必要である。

 金両基さん(静岡、比較文化学者・評論家) 総務省の「外国人台帳制度懇談会」から在日コリアン有識者として招かれて意見を求められたとき、日本人の住民基本台帳と国籍条項を除いてはかぎりなく同じであり、アメリカのグリーンカードなどを参考にして差別環境を払拭する法律であることが望ましいとわたしは意見を述べた。総務省は外国人台帳制度は作らず、住民基本台帳の一部を修正して外国人をふくめることになった。そこにこれまでの言い放し聞き放しの慣例に変化がうかがえることは喜ばしい。利便性は高くなったが、「通称名」がこれまでのような法的効力を伴わなくなる重要な仕組みもうかがえる。それは対応すべき重要な課題だ。

               (2009.7.1 民団新聞)より、転載しました。