米大統領、湾岸諸国を歴訪
イラン包囲網構築が目的
「不安定化」に懸念の声
【カイロ=松本眞志】ブッシュ米大統領は十一日、湾岸諸国最初の訪問国クウェートを訪れました。同大統領の湾岸諸国訪問は、イラン包囲網の構築が目的ですが、現地では米国の強硬策が湾岸地域を不安定化させるとの懸念の声が上がっています。
ブッシュ氏に同行したライス国務長官は、クウェートに向かう途中の大統領機内で、「大統領は、米国がこの地域の同盟国と真剣にかかわっていくことを明らかにするだろう」と発言しまた。
ライス氏は同日のクウェートのサバハ首長との夕食会で、域内の脅威として国際テロ組織アルカイダ、イスラム教スンニ派過激派に加え、「イランとその影響下にあるイスラム教シーア派組織ヒズボラ、イスラム武装抵抗組織ハマス」を挙げ、これらの「脅威」に対する米国と湾岸諸国の共同を主張しました。
ブッシュ氏は中東歴訪を前に五日の演説で、「イランの好戦的な野心に立ち向かう重要性について話し合う」と語っています。しかし、中東諸国では、イランではなく米国の好戦的な姿勢への懸念が広がっています。
クウェートはこれまで、米国のイラク侵略の基地は提供してきましたが、イランに対しては、いかなる攻撃にも自国領の使用は認めないとの立場を示してきました。
現地紙アルライは一面で、「(ブッシュ)大統領閣下、われわれが求めているのは『スマート(命中精度の高い)爆弾』ではなくて、『スマート(賢明)な構想』です」とブッシュ氏の好戦姿勢を皮肉り、クウェートは「米軍のイラン攻撃が湾岸地域を不安定化させる」との懸念をブッシュ氏に伝えることになるだろうと報じました。
クウェートを含む湾岸諸国は、昨年十二月の湾岸協力会議(GCC)首脳会議に初めてイランのアハマディネジャド大統領を招待。サウジアラビアは同月、メッカ大巡礼に同大統領を公式に招いています。
ブッシュ大統領はクウェートに続きバーレーン、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプトを訪問します。