ビルとビルの間を風が、しかも強い風が吹き抜けてゆくのが好きだ。
その音を聴いてるだけで和むし、
「自分が今、正しい場所にいるのだ」、と思える。
夏の終わりごろの、こんな天気も大好きだ。
急に変わる天気、不穏な感じのする気圧の変化、
ラジオからは台風情報。
薄暗い午後、雨は降ったり、止んだりする。
こういうのが好きなのは、子供の頃、
夏休みの終わりには毎年、以前住んでいた「新宿」を訪れていたから・・・・なのだ、と思う。
そこは懐かしい「故郷」のはずなのに、数日しか滞在できない。
何日かしたら、あの泥臭くて人間関係のベトベトした「田舎」に戻らないといけない。
見渡す限りの田んぼと、カエルの大合唱、嫌らしい田舎の子供たち。
とても憂鬱なのだが、
「新宿」にいる間だけは、本来の自分でいられる。
忘れそうになってしまう懐かしい、自分自身。
いっそのことさぁ、
台風で新幹線とかそういうの全部、吹き飛んでしまったらいいんじゃない?
何もかもが何もかもが、
「終わり」になっちゃったらそれで、僕は帰らずに済むから。
そうなったらいいのになぁ・・・・。
そんなことを考えながら灰色の雲を見ていたのを思い出す。
気がついたらいつの間にか・・・僕は大人になっていて、
「新宿」も僕の中で、”僕の故郷”ではなくなってしまっていた。
田舎も今では、嫌いじゃないし、
カエルの大合唱なんて本当に、愛おしいくらいなんだがね。
でも台風前の天候だけは、変わらずに好きだな。