ブンミおじさんの森/アピチャッポン・ウィーラセタクン監督
よく見ていても良く分からない映画。病気をしている男のところに親戚(おそらく妹か)が訪ねてくる。ダラダラ過ごしていると死んだはずの妻が幽霊となって現れる。ちょっとだけ驚くが皆はそのまま談笑している。そこに今度は山の精霊(といういう着ぐるみの猿)となってしまった行方不明の息子がやってくる。それはさすがにびっくりするが、やっぱり皆は談笑する。過去にとんで何かお姫様のような人が川の中で悶えてみたりする。農園ではちみつ食べたりずっとダラダラ過ごしている。そうして彼らは森に入り洞窟に入り、また過去に記憶が飛び軍隊の話が入ったりする。結局ブンミおじさんは死んでしまう。そうして葬式をして幽体離脱した出家した息子と親戚の妹がカラオケ屋で佇んで終わる。
思わず全部のあらすじを書いてしまったが、まあそんなに観る人もいないだろう。パルムドールを受賞した作品らしいが、何かの間違いかもしれない。確かに幽霊が出て特撮もそんなに無いのに独自の雰囲気で、まったく面白くない訳では無い。理解できないだけのことで、こんな映画は本当に初めて見たかもしれないという感慨はある。こんなのハリウッドで制作されたら、負債を抱えることは必至で、責任を巡って裁判で負けるに違いない。
恐らくタイの農村では、いまだに精霊や幽霊などと人々とのつながりは、残っているのだろう。だからこそこういう話が生きていて、不思議なりに皆が納得できる土壌があるという事かもしれない。それをまた別の文化圏の人間が見て驚愕する、という図式が成立しているのかもしれない。まったくよくこんな作品つくったもんだよ。
原作のようなものがあるらしいが、やっぱりそれは皆に読まれるんだろうな。タイという国は、確かに奥深い国なのである。