僕だけがいない街/三部けい著(角川書店)
漫画全9巻(最後の一巻は外伝)。主人公はタイムリープする能力があるようで、何かその場に異様なことが起こりそうなときに時間が少しだけ元に戻る。その違和感に気付くと事故を未然に防げるということだ。そのようなタイムリープを繰り返しているある時、誘拐を未然に防ぐことが出来たようだったのだが、その犯人にも気づかれた為に口封じに母親が殺されてしまう。さらにその犯人の罠にはまり、自分が母親殺しの犯人として追われる立場になってしまう。この事件の解決のために過去に戻る能力を強く望むのだったが、子供のころにあった連続誘拐殺人事件の時代まで、大きく時間が遡ってしまうのだった。
筋だけ略するとSFミステリ作品なのであるが、お話はそれなりに複雑で、恐るべき殺人鬼の連続犯罪と、その犯罪を防ぐべく奮闘する子供たち(のちに大人にはなるが)の友情物語ということになる。最終的にどのように事件が起こるのかはある程度分かっていたとはいえ、その時間の実際がどうなるのかは正確には分かり得ていない。それは自分たちで切り開いていくしかない冒険のようなものだ。犯人は狡猾であるばかりか、その姿はなかなか分からない。そうしてやっと犯人が明かされると、またしても意外な展開を見せて現代に戻ることになる。
はっきり言って面白い。アニメや映画にもなっているようで、当然話題になっていたのだろうと思われる。そのために僕も評判を聞いたのかもしれない。まとめ買いをしても安いもので、漫画そのものもそれなりに売れたのであろう。科白自体はそんなに多くは無く、全9巻でもそれほど時間をかけずに通読できるだろう。よく考えると収束してない時間のパラレルさは気にならないでもないが、その一つの時間軸の話では、ちゃんと物語は成り立っているように見える。これだけの構成を見事に描き切っている事が、何より面白さを下支えてしていると言えるだろう。お勧めです。