カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

滑りまくった悲しい痛み   サンダーロード

2024-04-29 | 映画

サンダーロード/ジム・カミングス監督

 監督が主演もしている。母親の葬儀の際に、思い出の曲を掛けようとするがうまく行かず、伴奏無しでその曲に合わせた独自の踊りを披露して、参列者から奇矯な行動だと思われてしまった警察官の男がいる。母を失った悲しみのあまり、そこまで奇妙なことをしてしまった訳だが、実際その後の言動などを見ていると、それなりに病的である。離婚した妻と娘の親権を争っていたが、その行動や言動が問題視され、娘も失う。奇妙な行動ばかりとるので、警察の職も失う。病気なんだから病院に行くべきだが、周りの人間も理解していないようだ。
 そういうジャンルがあるとすれば、いわゆる「痛い映画」である。主人公の悲劇が、観るものによっては喜劇と映る。母親を失ったことは大きな心の悲しみには違いないが、それと共に背景として、そもそも主人公の男のこころは、さまざまな要因で荒れていた。別居中の妻とは共同親権のお願いをして一人娘を育てたい思いがあってもはねつけられ、しかし娘とも意思疎通がちゃんとうまく行っているわけではない。警察の捜査においても、妙な言動を繰り返しているので、邪魔ばかりしている。上司とも最悪な関係だし、同僚も必ずしもそれほどの味方ではない。生活は荒れているし、心の中は嵐が吹きまくっている感じかもしれない。
 しかしながら、そのまま破滅の道をずっと突き進んでいくのかというと、後半になって反転とまで言わないまでも、静かにその心は鎮まる展開を見せる。この男は、いわゆる心の優しい男で、変なことばかり言う機転はきくものの、それらはやはり本心では無いのだろう。静かに自分を見つめ直すきっかけさえつかめれば、いわゆる正常な道を歩むことも可能になるのかもしれない。そうした救いの物語のために、前半なんだか滑りまくっている悲劇が続いたわけである。大掃除の前に、部屋は荒れまくった方が、かえってすっきりと掃除ができるというものである。妙な感慨を呼ぶ作品ということで、評価も高いということなのであろう。
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