カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

探し物は何ですか?   さがす

2024-05-13 | 映画

さがす/片山慎三監督

 日雇い労働で糊口をしのいでいる父親が、懸賞金のかかった指名手配犯を見たと語っていたが、その後行方不明になる。中学生の娘は、なんとか探し出そうとするが、日雇い現場に父親の名前で働いていた男が、連続殺人犯らしい人間だった。そのことを警察に話すがろくに相手にされず(ひどい話であるが、そのような下層階級の人々を信用していないという背景があるようだ)、自ら手掛かりをたぐって、彼氏候補の同級生と一緒に父親を捜すのだったが……。
 多少時系列があちこちに行ったりして、それぞれの事情が語られることになる。父子家庭になる顛末や、連続殺人犯の性癖なども分かるうちに、この物語の不思議な展開も読めていく。それぞれのキャタクタ―の事情も良く描かれていて、一種の社会性のある物事ともリンクしていることが分かる。相手にだって事情があるのだ。そういう細かいところも案外物語の流れに効いているものがあって、なるほど、だから主人公の一人である娘はこんな態度を取っていたのだな、などと納得しながら観ていた。恐ろしい話でありながら、謎解きのカタルシスはある。さらにいわゆる復讐の物語のようにも思える。犯罪の要素はまだ残ったままにはなっているのだが、それはそれで余韻としては残っていいのかもしれない。使われる身としては、それでいいだろうという事か。
 いわゆる傑作と言っていい作品で、最初は地味な作品かとも思われたが、それなりのスケール感も、展開の見事さもあって飽きさせない。その上で、確かな作品としての質の高さがあって、芸術的な部分でも評価の得られるものになっているのではなかろうか。観た人には分かる、映画を観たという充実感を得られる作品であろう。ちょっと気持ちの悪いところはあるが、なんだか韓国映画の良質な作品を、日本語で観ているような錯覚に陥ってしまった。もちろんそれは誉め言葉である。
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