マイ・ブロークン・マリコ/タナダユキ監督
OLのシイノは、テレビニュースで親友と言える友人が自殺したことを知る。死んだマリコは、父親からなどの虐待を受けながら育った経緯が順に明かされる。せめてマリコの遺骨だけでも取り戻したいと考えたシイノは、格闘の上父親宅から遺骨を強奪し、逃亡する。そうして、そういえばかなり以前マリコが行きたかったと語っていた「まりがおか岬」を目指し、高速バスに乗り込むのだった。
虐待を受け続けるマリコの過去の記憶と、こちらもどうも家庭に問題がある不良のシイノとの友情(とはいえマリコは死んでいるが)の物語ではある。逃亡先で、さらに窮地に陥るわけだが、謎めいた釣り客の男に助けられる。そこにさらに事件に巻き込まれて……。
いろいろと壊れている現実はありながら、曲がりなりにも再生の物語でもある。原作の漫画があるようで、どの程度の再現があるのかは分からないが、虐待を受ける子供の問題を取り上げながら、それなりのエンタメ作品になっている。不良娘が陥る悲劇としてはどうしようもないように見えて、ちょっとあり得ないとは思うものの、そう来るのか、という驚きはある。そうしてまあ、それでいいのかもしれないな、ということなのである。
僕としてはやはり父親は許せない気もするが、そんなことを言うと付き合っていた彼氏らしき存在も許せないし、だからと言って不良になって精神も壊れていくような人は、やはり病院にかかった方がいい。どこかで児童相談所や警察が出てきてもおかしくないし、そのような発想があまりないことには不満だが、それが子供世界ということなのかもしれない。
更にそういう人が就職する先がブラック企業で、悲惨だが、しかしそれが救いでもあるということも示唆されている。シイノが生き抜く土壌というのは、やはりこういう世界であり続けるのであろう。