カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

正視するのがつらい   あさがくるまえに

2023-01-03 | 映画

あさがくるまえに/カテル・キレヴェレ監督

 早朝からサーフィンをやった帰りに事故を起こして、脳死状態に陥る青年がいた。当然両親は悲しみに暮れる。過去のエピソードに戻り、付き合っていた彼女とのいきさつも分かる。それらの幸福な時間が、突然に途切れてしまった訳だ。しかし脳死を受け入れるしかなく、臓器提供に同意するに至る。一方、心臓病に苦しむ女性がいて、臓器移植以外に生き延びる手立てがない。息子二人を育て上げ、過去に付き合っていた女性との仲も戻るようになるのだったが……。
 脳死の議論のための映画ではないが、脳死という特殊な状態の死によって、それを待つ人がいるという現実を淡々と描いている。医者としては患者を助けたいが、しかし助けるためには人の死が必要になる。一種の矛盾だが、そのために働いている真摯な姿勢も分からないではない。その残酷さを含め、移植の現場をかなりリアルに描いていて、正直に言ってそれなりにホラー映画のようだった。僕は特に血に弱いのでそうなのかもしれないが、リアルな分スプラッター映画より気持ち悪かった。お医者さんって、これだけでも相当えらい業務だな、ほんとに。好きなら好きで、それもなんとなく問題ありそうだけど。
 臓器を提供する側の死者が、この場合若くて元気のいい青年だったということで、これ以上にない素晴らしい心臓が手に入ったということになる。受ける側の女性は、いわば近づいている死を受け入れる心情になっていたのだが、適合するうってつけの心臓が手に入ったのである。おそらく彼女の次の段階の人生は、また続くことになるのだろう。
 良い話なのか悪い話なのか、どうもよく分からない物語だが、現実もこのような物語をはらんだものが、臓器移植の現場なのであろう。

コメント
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