カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

恋愛と老齢期   スーパーノヴァ

2023-01-25 | 映画

スーパーノヴァ/ハリー・マックイーン監督

 キャンピングカーで旅をする二人は、長年連れ添った夫婦のような同性愛カップルである。どうもこの旅は、若い頃に訪れた場所をめぐっているものでもあり、そうして片割れのサムの実家であり姉の家への訪問でもあった。二人とも高齢化していて、作家のタスカーは認知症も進んでいる。二人は深く愛し合っているがゆえに、晩年の考え方にすれ違いが出てきているのが分かっていく。
 老夫婦の悲哀を描いているわけだが、同性愛だとどうなるか。要するに何も違わないように見えて、やっぱりなんだか違うようにも見える。知人や家族も皆認めている間柄で、そのことには何ら違和感のない世界になっている。もちろん過去には葛藤があったのかもしれないが、少なくとも既にそういう段階の話ではない。しかし老齢期に差し掛かり、一人は作家だが、とても新作など手に付けられないほど認知症が進んでいる。片割れは見守りの介助をしながら、いたわりながら暮らしているのだろう。今は休暇中で、とりあえず仕事をする必要もない。認知症の進んでいる作家は、そういうパートナーに迷惑をかけ続けたくないと考えている。そうするとどのような選択が彼には残っているのだろうか。
 二人はいまだに同じベッドで夜を過ごし、裸の場面もある。要するにそういう感じはまだあるのかもしれない。子供は無いが犬を飼っていて、おそらくいつも一緒のようだ。お互いが芸術家だし、暮らしに困っている風でもない。むしろ豊かな部類だろう。しあわせな老齢期と言っていいだろう。しかしそれも一人の認知症が、この関係に揺さぶりをかけている。認識のできるうちに考えることは、やはり相手のことなのかもしれない。
 特に驚くようなことではないとは思う。ゲイのカップルを演じている俳優の演技を楽しむ作品かもしれない。日本人の僕が見ても、感情の機微が細やかによく分かる見事さがある。特にコリン・ファースは、若い頃に美男子で鳴らした人気俳優だ。多くの女性は、ずっと魅了され続けていたはずだ。そういう含みもあっての物語なのであろう。
 実際にはここで介護保険の話になったりするはずなのだが(日本だと、ということだ)、そういうちょっと前の一時の時間であろうと思う。だから、ちょっと自意識が強すぎるのではなかろうか。一緒に暮らす特殊性もあるのかもしれないが、得難い相手だからこそ、乗り越えなければならない課題なのかもしれない。何でも同性愛で考えることで、より自然な語りになる時代になった。ちょっとした感慨のある細分化ではなかろうか。
コメント
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