カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

ユダヤ人がポーランドで生き延びるには   二つの名前をもつ少年

2019-10-30 | 映画

二つの名前をもつ少年/ペペ・ダンカート監督

 原題はrum boy rum ポーランド映画。映像の最後に主人公のモデルとなった人物が出てくるが、要するに実話を映画化したものらしい。
 ユダヤ人の強制居住区から逃げ出した8歳の少年の逃避行が描かれる。ドイツ兵に捕まれば強制収容所に入れられ(僕らは歴史を知っているのでどうなるか知っているが)、どうなるかわからない状況で、飢えをしのぎながら逃亡生活を送る。子供でも農場などで労働がさせてもらえるらしく、そういうことをしながら食いつないでいく。森の中でサバイバルもする。名前を変えてユダヤ人であることを隠すが、立ちしょんなどをすると、ユダヤ教のしきたりで割礼しているのがバレたりする。なかなかたいへんなのである。
 何よりポーランドの冬は厳しい様子で、この極寒の地で野営して暮らさなくてはならない過酷さが凄まじい。これ、本当によく生き延びたものである。九州の人間なら間違いなく、誰であっても凍死しているはずである。
 子供であることと、その子供なりの賢さがあって、何とか庇護を受けながら、しかしその弱さから、同胞のポーランド人の大人から騙されたりもしながら生きていく。家族との訣別のいきさつなども、徐々に明かされていく。
 孤独でつらく厳しい戦争中の逃避行を描いて、たいへんに素晴らしいドラマになっているのではないか。人間が生きていく厳しさが見事に描かれている作品である。妙なお涙頂戴の反戦映画を見るより、数倍も有益な反戦映画といえるだろう。近年はこのような映画が増え、やっと冷静に戦争を振り返ることができるようになってきたと感じる。時代も変わってきたのである。
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