カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

どんより暗くて面白い   失楽園

2019-10-04 | 読書

失楽園/諸星大二郎著(集英社)

 漫画。表題作は二編あり、他に6編を収めてある。それぞれ違う話だからまとめて語るのは乱暴だが、比較的大人向けに性的な表現を避けずに描いた暗い作風が多い。表題作はダンテの神曲のパロディで、またほかの作品の中にもいろんな作品や絵画などのオマージュなどがちりばめられている。何か得体のしれないものが出てきたり、何かを暗示したものが、必ずといっていいほど出てくる。はっきりしたことは言えないが、人間の中の不安や恐怖が、なんとなくにじみ出てくるような、いやな感じを楽しめるのである。まさにそれが諸星作品の醍醐味であるのだが。
 一応ミステリ仕立てでお話が進む場合が多いが、結末まで行っても、それが解けたというカタルシスを楽しむという趣向ではない。分かったからといって、それがハッピーではないからだろう。そういう意味では多少ヒネた人向けの作風なのかもしれない。まあ、僕は好きなんですけどね。ある意味で宇宙人に侵略される「生物都市」も、何だこりゃ、というやられ方をするし、役場の人間があることに巻き込まれる恐怖を描く「招命」も、不幸ではあるが、何かあんまり同情できない。アメリカが鎖国して日本が開国を迫るパロディも、まあ冗談だからいいか、という感じだ。
 ずいぶん前に買ったまま、なぜか読んでなかったわけだが、また諸星作品を読み返してみたくなった。やっぱりこの暗さは、なんとなく癖になります。
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