カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

力いっぱい過激な世界   男の条件

2018-04-28 | 読書

男の条件/原作梶原一騎・画川崎のぼる(集英社)

 巨人の星のコンビが、同時期に描いた作品だそうだ。復刻版が出てまた読めるようになった。何か再評価のきっかけがあったのだろう。
 どうも真剣に描かれたマンガ道であるようだが、最初はギャグ漫画ではないかと思った。主人公たちが生真面目で軌道を逸しており、バカにしか見えないからだ。しかしながら読み進むうちに、何か本当に真剣になりすぎてこじらせて考えすぎている事が分かってくる。そうしてどういう訳か、そのような生真面目さのようなものに少なからず心が打たれていくような心持がしてくる。漫画的な過剰な生真面目表現が、この世界では成り立っていることに改めて気づかされ、描いている人たちの情熱のようなものが伝わってくるのだろう。考えてみると同じコンビが描きだした「巨人の星」という名作漫画であっても、客観的な視線でみると、多くの人が繰り返し茶化していたギャク性が満載なのであるが、それは他でもなく過剰な情熱が生み出した、本当にストレートな思いが強すぎるからなのであろう。多かれ少なかれ真剣になって物事に取り組まないことには、本当に本物のものは生み出されることは難しい。漫画を一般の人々に伝わるように描くという事は、描いている人もそのことを真剣になりすぎるくらいに考えて実行していくことなのだろう。そういう意味では、これこそが真実の物語という事なんだろう。
 そうはいっても既にいろいろと斜に構えて世間と長らく付き合ってきた身としては、やはりこれは無いなあ、と素直には思う。面白いけれど、それはやはり虚構だからという感じだろうか。彼らのような人々が、漫画を離れて何かものをいうようなことになると、煙たいばかりでなく、非常に害悪がありそうにも思う。受け取る側としても、一定のデフォルメをもって解釈し直す必要があるのではないか。
 しかしながら僕自身は、この漫画のように本当の男として生きるのは、まっぴらごめんだな、と素直に思う。もちろんそんなこともできやしないし。そうなんだけれど、もう少しくらいは、ある程度は実直な考えも持った方がいいのかも、とは考える。今さら遅いという事を別にするならば。
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