カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

俳優たちが生きている   ケンとカズ

2018-04-16 | 映画

ケンとカズ/小路紘史監督

 チンピラ風の男たちは、修理工場で働くかたわら地元ヤクザの下請けのような形で覚醒剤の密売をしている。一人は妻が身ごもっていて金が要る。一人は痴呆症の母親をかかえている。ヤクザから預かっている覚醒剤を横流しして、新たに資金獲得に乗り出す。敵対するグループとも裏で手を組んだりする。もともと地元の学校の先輩でもあるヤクザの元締めにバレると、大変に危険である。そのようなヤバい状況の中、二人は仲たがいしていくのだったが…。
 はっきりいって、傑作と断言していい。著名な俳優は出ていないし、かなりの低予算の映画であることは間違いないが、だからといって映画としてちんけな部類や映像では無い。しっかりしたカメラ回しだし、この無名の俳優たちの演技も大変に素晴らしい。特に主人公の一人である毎熊という俳優は、本当のチンピラにしか見えない。しかし演技も上手いのでチンピラではあり得ない。地元の小さい社会での底辺の人々の描写は、これが今のヤクザ社会なのか、というリアルさがビシビシと伝わってくる。様々な展開があってクライマックスの修羅場は、クラクラするような緊張感と映画の醍醐味を伝えている。物語としても非常によくできている。
 もちろん暴力場面の多い犯罪を描く映画だから、気持ちの良い気分になるような映画では無い。映画が好きで、なんだか普通の商業映画に飽き足らない人が求めて感動する映画なのだと思う。このような傑作はめったに作られるものでは無い。小路監督の初作品だというが、今後もこのような映画をつくることが出来るのかというのも未知数だ(ぜひ作って欲しいが)。これまでにも下地になっている数々の映画がある事と思うが、この作品の影響力で、また新たな境地が開かれていくような高揚感も覚える。それだけ観るものを捉える力のある作品である。しっかりかみしめて観てもらいたいものである。
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