カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

ぽかーんとしてしまう   かあちゃん

2018-04-22 | 映画

かあちゃん/市川菎監督

 貧乏長屋に忍び込んだ泥棒だったが、逆にうどんを振舞われ、その家の親戚として一緒に住むようになる。そういう家族を仕切っているのが、風変りだが芯の強いかあちゃんで、世知辛い世の中にあって、非常に人情に厚いのである。泥棒は心を打たれ、逆に家から逃げ出そうとするのだったが…。
 原作は山本周五郎の小説らしい。一応映画だが、舞台劇のような、それも大衆劇のような浪花節の世界である。長屋の狭い世界にあって、噂話や妬みがある中、皆貧乏で苦しみながら暮らしている様子である。そういう中にありながら、小さい家族ながら結束して助け合って、貯金をして人のために施しをしたりする訳である。あまりにもいい話過ぎて、現代人の感覚からすると、何かぽかーんとしてしまいそうである。いったいこれは何なんだろう。そういう話はフィクションではあり得るのだろうけど、死ぬか生きるかのその日暮らしをしているような江戸時代の苦しい一時期に、こんなことをしてしまえばひとたまりもなく皆死に絶えてしまったであろう。
 そんなことをどうしても考えてしまう能天気な作品なのだが、繰り返すが、まあ、いい話なのである。現代人の方が江戸時代の人よりずっと慈悲深い人が多いと思うけれど、あの時代にも奇特な人たちがいたのかもしれない。
 市川監督が80も過ぎてからメガホンをとったという事らしく、そういう幻想をもって死にたかったのかもしれないな、などと考えてしまった。まったくいい話は年を取ってから見るべきなのかもしれない。他の人には何の教訓にもならないし、若い人には多少の害悪のある話かもしれないが、そういうことを了解していれば観ても構わないのではないだろうか。
コメント
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