アイデアの作り方/ジェームス・W・ヤング著(CCCメディアハウス)
帯に60分で読める、と書いてある薄い本である。既に古典的な名著とも言われていて、知っている人も多いのではないか。
薄いのは本質的なことしか書いてないからである。多少翻訳調の日本語文章に引っかかりがあるが、きわめてシンプルな方法論だ。さらに解説の竹内均の文章も良い。内容を繰り返しているだけのようだが、やはり法則としてはシンプルだからだろう。
基本の流れは、 ① データを集め ② データを咀嚼し ③ データを組み合わせ ④ アイデアを発見(ユーレカ!) ⑤ アイデアのチェック(現実問題に即して考える)という事になる。段階的なものは最初から大切だろうが、とくにアイデアというものは、既存の何かと何かを組み合わせて新しくすることにあると強調している。まったく新しいものを持ってくるのではなく、今ある何かを何かと組み合わせることによって新しくなる、という事である。そしてそれはそう簡単では無い。その上に法則としてはシンプルでも、誰もがこのことを実行しない、とまで書いてある。だから大変に重要で簡単な法則であるにもかかわらず、伝家の宝刀であるこの秘伝を開示してもかまわないそうなのだ。考えようによっては、これは読者に対する挑戦状のようなもので、どうせ仕組みを知ってもできない人には関係ないという事なんだろう。もっというと、分かったとしても、理屈でわかるのと実行できるのとでは、大きな違いがある事なんだろう。それだけ斬新なアイデアというものは、簡単に生まれえるものでは無いから価値が高い訳である。
データを集めてあれこれ組み合わせを考えるまでは、実際に誰もがやっていることだろうと思う。一時いろいろ考えて、離れてみるという事が大切だとも書いてある。いやむしろ考えていないような時間に、突然このひらめきがやってくる。そればかり考えている時よりもむしろ、考えなくなっているような時にこそひらめくという事があるのだろう。それはうんうん唸って考えている時間を経たうえで、まだ無意識のうちに考え続けている自分があって、あたかもその分身のような自分が生み出す組み合わせなのかもしれない。思い当たるフシのある人も多いだろうが、偉大なユーレカはそういうものなのだろう。