イングランドにはプレミア・リーグというサッカーのリーグがある。イタリアのセリエAとかドイツのブンデス・リーガとかスペインの何とかというようなものと同じで、サッカーファンの人気も高いようだ。
ところが発足前までは、英国には悪名高いフーリガンの暴徒化や、立ち見スタジアムの人々の将棋倒しによる多数の死者を出す事故などを起して、いわば社会問題化していた。そういうことに伴って、人気の方も低迷していたらしい。
競技場を整備するにも金のかかる問題だし、多くのチームを抱える英国フットボール協会は放映権の分配などを公平に分けるために、人気のあるチームとそうでないチームとに逆に不公平が出ていたものらしい。以前には日本にも巨人戦への放映権問題なんかもあったようだし、そういう現実的な人気の差におんぶにだっこのもたれ合いが、改革を拒んでいたということのようだ。
そこで伝統と人気のあるビッグ5を中心にして分離独立リーグを立ち上げて、テレビの放送権料を引き上げてリーグの再建をしたということらしい。まあ、商売をやりやすくして価値をあげて金をもうけたということなんだろう。
そういう流れはよく分かったのだが、面白いと思ったのは、分離独立する際の所属しているフットボール協会との契約の解釈の仕方だった。ルールを破って独立するのであれば、大きなペナルティを背負いかねない。独立そのものを否定されるような訴訟問題に発展するかもしれない。
ところが、協会に所属するチームとの契約の前に、選手との契約においての縛りの期間とに違いがあったのだ。あとから出来たルールである選手間との契約期間の短さに対して、協会に対するチームの契約の方が長いということであって、それをもって後からのルールが成立するというのであれば、前のルールは無効になるという理屈で強引に分離独立を勝ち取るということをやってのけるのである。
何故これが面白いのかというと、日本の役所とはまったく考えが逆だからだ。日本は後から成立したルールであっても、前の別のルールの縛りを適用して無力化することばかりをやるのである。新しいルールが過去に抵触しないことは少なくて、スパゲティ上に絡んだ条約のそれぞれのルールを改正するのは至難の業である。それぞれの利権が権利を離さない構造はそこにあって、新しいルールというのは有名無実化してしまうという訳だ。結局法よりも根回しの利権の配分で、無視をする土壌を作って実行するということになって、そういう調整の上手さをもって政治的な駆け引きをするということになっている。よく政治家は嘘をつくというような事がいわれるが、彼等は嘘をついているのではなく、両方に約束をして調整しているだけなのである。というか一方だけの約束を守ることは、事実上不可能なのだ。
そういう訳で、日本では解決不能なことと思われている事の多くは、このように新しいルールの方が強いというルールを適用するだけで、多くの場合解決しそうなことが分かる。もっともルール違反であるというのを新ルールで遡って適用することはできないので、やはりある程度の調整は必要になるだろうけれど、日本のスパゲティ状の法の解釈を変える突破口にはなるかもしれない。
そうなんだけど、しかし日本では既に新ルールを過去に適用して告発するような事も現実に行われているようだから、つくづく法を守らない国ということも、同時に考えられる訳だ。法の原点であるはずの憲法自体も厳密には守られていないような国だから、結局解釈を変えて法をないがしろにしてきたツケがたまっているということなのかもしれない。
決まり事を作るのも守るのも駄目だということを、まずは返上する事の方が先なのかもしれないのだった。