カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

速すぎると駄目な場合もあるらしい

2012-06-15 | 時事

 今年はロンドン・オリンピックということで、オリンピックにまつわる話題で盛り上がっているようだ。個人的にはあんまり興味はないものの、それなりにさまざまな話題にふれることが多くなるし、否応なしに情報が入ってくるという感じだ。
 そうした中、南アフリカのキャスター・セメンヤ選手のドキュメンタリーを見た。女子中距離の選手なのだが、圧倒的な速さということもあるし、見た目や声の低さから、男性であることが疑われて、いろいろと話題になった選手である。結果的にはそのような体質の人であるということのようだけれど、それで女性では無いということでもないらしい。
 何となく信じられない人が多いように思うが、医学的に男性か女性かというのは判断が難しい問題らしく、調査をしてもどこで線引きをするのかは、あくまで恣意的にならざるを得なくなるという。ドキュメンタリーでは明確に語られなかったけれど、両性具有というような人というのは、ある一定の確率で存在する。セメンヤ選手がそうであるのかははっきりしないのだが、通常の女性よりテストステロンなどの男性ホルモンの分泌が多いというのは確からしいことのようだ。もちろんだからといって競技に有利であるかどうかは、実のところ明確でもない。男子のウサイン・ボルトという選手だって、人間離れした骨格の持ち主であることは知られている。しかしそれは自然に備わったものであって、特にインチキであるということにはならない。同じくセメンヤ選手の場合だと、女性らしくない体格の持ち主だからと言って、インチキをしている訳ではないのだ。しかしながら女性らしくなく速すぎるという理由で、陸上界から追放されそうになっているということなのだ。
 さらに疑惑が持ち上がった当時は18歳という年頃のことで、彼女は渦中にありながら激しく悩まされることになってしまう。引きこもったり反抗的になったり、出場できるのかできないのかということも明確にならない未来にいら立ち、すべてが投げやりになったりもしてしまう。ほとんど残酷物語といってもよい境遇の中、わずかな望みを託して自ら棄権するように言われた大会に弁護士など交えて交渉し出場しようとする。
 結局最後まで、人々の興味は彼女が本当に女なのかどうなのか、ということであるようだ。最終的にはオリンピックの出場を果たすことになるのだが、パパラッチなどはそのような興味で付きまとって離れない。そういう意味でも、彼女はやはり必要以上に強くならざるを得ない。そうするとますます男らしく見えるということにもなってしまうようだ。また、彼女と同じ競技に出ている選手たちとしても、やはり割り切れずに審査するように働きかけるようになってしまう。時には別の検査と偽ってまでも、性別検査が繰り返し行われていくのである。
 つまるところ人類の中で一番早いというのは何なんだろうな、とも思う訳だ。確かに日ごろの鍛錬もあるのだけれど、普通のひとよりは異常に早い人々がさらに速さに磨きをかけて競うということが行われている。スポーツというのはそういうものではあるのだけれど、そういう異常な頂点を求めるあまり、人々はその選手たちの内部や背景にまで踏み込んで詮索することを平気でやってしまう訳なのだ。
 まあ、僕もその一人ではあるのだけれど、そういう訳で少しばかりオリンピックには冷めて見ている自分がいるようなのである。もちろんセメンヤ選手に関しては、このドキュメンタリーを見るまでよく知らなかった事を恥じて、まともに応援しようとは思ったことであった。せっかくつらい目にあっていることだし、ものすごい記録が出るといいですね。そうするとまたその記録を残すのかどうかという議論がわき上がることにはなるんだろうけれど…。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする